O次郎

君の膵臓をたべたいのO次郎のネタバレレビュー・内容・結末

君の膵臓をたべたい(2018年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

原作も実写版も未見での視聴。偶然同じクラスの美少女の秘密を知り、余命いくばくもない彼女と残された時間を共に過ごす...という一昔前のいわゆるギャルゲーみたいな設定の感動作。

いきなり前置きを覆すようなことを書くが、メイン二人の高校生男女が恋人同士の関係には発展しなかったことが展開としてとても良かったように思う。
もちろん、二人とも思春期の子女なのでそういう雰囲気はあったにしろ、最終的には自然体の「仲良し」でその関係を終える。

不治の病を患ったヒロインが「普通」の生活を大事にする理由を主人公に語るくだりがとても自然で説得力があり、そうであるからこそ、他人に無関心で偶然に彼女の病状を知ってもどこ吹く風だった主人公にヒロインが興味を持った病院でのシーンが実に意義深い。

大病患ってるわりに病で衰弱していく様がほぼ画に出ていないのは些かご都合主義な気もしたが、そこでリアルを出されても『愛と死を見つめて』みたいな悲愴感が幅を利かせて作品テイストが塗り替えられてしまうのでこれで正解か。
そうした悲愴感が薄い分、死ぬ前にやりたいことを一つ一つ主人公と体験していくヒロインの姿に感動の押し売りを感じずに観られる、とも言える。

終盤、画として描かれることなくヒロインは病ではなく事故に巻き込まれて世を去るが、それを境に主人公が彼女以外の周囲との関係を主体的に築こうと成長していくコントラストは見事に。
最後、彼女の親友と主人公の墓参りにて彼女の気配を感じる...スーパー戦隊シリーズの名作『鳥人戦隊ジェットマン』みたい。
でも後年の結婚式があるという意味では実写版のほうがそれに近いのか。
ともかく、そんな生き方を問いかける一作。
O次郎

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