むーしゅ

リディバイダーのむーしゅのレビュー・感想・評価

リディバイダー(2017年製作の映画)
2.4
 Youtubeで260万回以上の再生回数を記録したテスト動画「What's in the Box?」(まだYoutubeで見れます)を経て映画化された作品。原題は"Kill Switch"と"Redivider"の2個ありますが、ポスターを見てもわかる通り"REDIVIDER"は逆から読んでも同じという所謂"回文"でこのタイトルの方が世界観が反映されていて良い気がします。日本でもできれば英語表記にしてほしいです。

 エネルギー枯渇の危機に直面している近未来。人類は地球を複製したエコーワールドから資源を調達することによって、この危機から逃れようとしていた。しかし地球はエコーワールドと繋がる巨大タワーの暴走により崩壊の危機に陥ってしまい、その原因を探るため元NASAのパイロット・ウィルがエコーワールドへ送り込まれることになる、という話。現実世界は客観視点(通常の映画の視点)、複製世界は一人称視点(FPS)という異なる撮影手法がとられており、まるでゲームの世界。監督はきっとシューティングゲームヲタクなんだろうなと思ってしまいます。

 さてこの映画ですが、このタイミングでの公開となるとやはり比較してしまうのは、Steven Spielberg監督の「レディ・プレイヤー1」です。現実世界と複製世界、現実世界と仮想現実世界とどちらも2つの世界を舞台に物語が繰り広げられ、ゲームっぽい雰囲気も非常に近いです。本作は言ってみれば、"もしSteven Spielbergでは無い誰かが「レディ・プレイヤー1」を監督したら"を見ている気分でした。監督のTim Smitは数々の映画にVFX担当として関わってきており、本作でもその技術力の高さに驚かされます。特にドローン型のロボットの造形がかなりかっこよく、シューティングゲームだとしたら本当に素晴らしい作品だと思います。

 しかしやはり監督としての実力の差なのか予算の差なのか、映像の背景と撮り方で大きく差が開いた気がします。背景に関してはそもそも全体的に屋外撮影が多く、また室内であっても日常的な建造物が中心で無機質な建物などが無くSF感に欠けます。基本的にずっと街を歩いているだけで危険地域を歩いている気がしない状態が続き、塔へは近づいているはずなのですがよくわかりません。また最後に漸く塔へたどり着いても、いきなり最深部へ場面が飛び、それが故真相へと近づいていくようなドキドキ感が全く湧かずもったいない。これは低予算で撮影したことが理由なのかと思いますが、もう少しロケハン次第で何とかなった気もします。また撮り方というか場面転換というか、何と言ってよいのかわかりませんが映像がとにかくプツプツ切れる演出が謎です。近年「アバター」や「ゼロ・グラビティ」など3D映画を中心にロングテイクを使うことで奥行ある世界観へ入り込めるような映像にすることが多いかと思いますが、この映画の場合、とにかく歩くたびにプツプツ切るんですよね。時として爆撃などの衝撃による映像の乱れを表現しているところもあるのですが、そうでなくてもとにかくプツプツ切る。映画の上映時間の調整なのか、予算の問題なのかはわかりませんが、せっかくFPSにしているのにもったいないです。FPSのシーンに関しては、何だったら1回も切らないほうがきっと入り込めるのに、と思うのですが。Youtube動画が注目を浴びたように、題材が面白いだけにSteven Spielbergがこの映画の監督をしていたら全く違う評価になっていたのでは?と思う部分があり、非常にもったいない映画という気がします。出来るなら是非再チャレンジしてほしいです。

 ところで一人称視点の映画といえば2017年にロシア映画「ハードコア」が日本でも公開され話題になりましたが、本作などこういった映画に関しては映画館で見るべきではもはやなく、スマホかVRゴーグルで見た方が確実に面白いです、きっと。映画館という媒体を通すのでは無い新しい映画の形として拡大できる領域ではあると思うので、是非これからもこれはこれで作っていってくれると嬉しいなと思いました。ちなみに主人公のウィルはVRゴーグルのようなゴーグルを常に装着しているわけですが、なぜ誰もその点には突っ込まないんでしょうか。「X-MEN」シリーズでJames Marsden演じるサイクロップスみたいな見た目になっているはずなので、誰か突っ込むべきだと思うんですけどね、不思議です。私なら「おいおい、こっちに向かってオプティックブラストを出さないでくれよ」って絶対言います。