No.1735 1976年アメリカ映画
監督派シドニー・ルメット
「12人の怒れる男」「狼たちの午後」の監督さんだ。
アカデミー賞脚本賞受賞
これは、UBSのテレビキャスター ハワード・ビールの物語であると最初に語られる。
長年ニュースキャスターで人気を博してきたハワード(ピーター・フィンチ)2週間後に解雇されることを言い渡される。失望した彼は放送中、最後の放送の日に自殺を予告する。
テレビ局には抗議電話が殺到する。即解雇を主張する上層部であったが、彼の長年の友人であるニュース部門の責任者マックス(ウィリアム・ホールデン)は、解雇の前にもう一日だけハワードに番組を任せてみることにする。
するとハワードはその放送でテレビ業界の欺瞞を告発。この狂態は世間に一大センセーションを巻き起こす。
この騒動を逆手にとって、新鋭プロデューサーであるダイアナ(フェイ・ダナウェイ)は、ハワードを中心に据えた新番組の制作を画策するのだったが。
長々とストーリーを書いてみたが、ここからが本番。系列局を舞台に、視聴率に踊らされるテレビ業界人の狂騒は、半分病んだ人間の言動さえ、面白いと判断した視聴者に踊られされ、どこに行き着くかわからない。中身なんかいらないただひたすら視聴率、会社の利益を追い求める。
そんな業界の化身をフェイ・ダナウェイが演じる。彼女に恋する責任者マックスもまたそんな業界で上り詰めてきた人間であったが、彼にはまだ人間らしさが残っていた。
それが二人を引き裂くことになる。
この映画がテレビ業界を痛烈に風刺した作品であることは間違いないのだが、その監督の思いは、マックスがダイアナに告げる最後の言葉に象徴されている気がする。
マックスは二人の関係を語りながら、この業界の監督の思いを代弁しているようだ。
「君やテレビ局が、手を触れたものは皆
ダメになる
君はテレビの化身だ 苦しみも 喜びもない
人生の全てが予定通りだ
戦争にも 殺人にも まるで関心がなく
日常生活は くだらない喜劇
時間や空間の素晴らしさも
秒単位で見てしまう
正気じゃない
あまりにひどくて 君が触れたものは
全て死ぬ
私は違う 私には まだ感じられる 喜びや悩み 愛を」