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ヒューマン・フロー 大地漂流のregencyのレビュー・感想・評価

2.5
監督兼美術家のアイ・ウェイウェイが撮った、現代の「出エジプト記」。
エジプトから脱出したユダヤ人のように、海を渡り、山を登り、川を跨いで逃れる難民たち。しかし、彼らは有刺鉄線で区切られた国境の壁に遮られ、貧困や救援物資の不足などからくる疲弊に襲われる。
難民の受け入れ先でも生じる様々な問題を、現地の人たちの証言で露呈する。
ドローンを効果的に使用することで、物珍しくカメラを見る難民の子たちのイキイキした表情が、ダイレクトに映し出されるのが救い。

ただ、伝えたい事や訴えたい事は理解できるし、多くの人が見るべき映画というのを重々承知の上で苦言を言えば、2時間20分というランニングタイムは長い。
難民を取り巻く現状ありのままを映したいという意図だろうけど、それ故にメリハリが薄くなり、観る集中力を欠いてしまう。
また、美術家という事もあってか随所に象徴的なショットを入れているのも、尺の冗長感が増して逆に蛇足。
マイケル・ムーアや森達也が、適度にユーモア要素を入れる事でメリハリを生んで観やすくしているのと比較すると、よく分かる。
監督が敬愛するというマルセル・デュシャンを意識した、ドローンを使ったラストショットが印象的だっただけに、なおさら惜しい。

難民同様、監督自身も祖国に戻れない身として、もっと彼自身の生の主義主張を表しても良かったのでは。
それが唯一感じられたのが、監督がシリア難民と冗談を言い合ってパスポートを交換するシーン。
共に祖国を追放された身としては、パスポートなど無用の長物なのだ。

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