MasaichiYaguchi

ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

3.6
テニス史に残るビヨン・ボルグとジョン・マッケンローとの〝3時間55分〟に及ぶ1980年のウィンブルドン決勝戦を山場に実話ベースで映画化した本作は、少年時代にまで遡って彼らが抱いた葛藤や苦悩を交えて夫々の人物像を浮き彫りにしていく。
端正なマスクと冷静沈着さから「氷の男」と呼ばれたボルグと、天賦の才を持ちながら納得のいかない審判には狂犬の如く噛み付く「悪童」マッケンローは恰も〝水と油〟のように対照的に見えるが、描かれた過去のエピソードからは我々が知らなかった意外な〝実像〟が伝わってくる。
若くしてテニス界の頂点を極め、映画スターのようにチヤホヤされるボルグ、それに対して観客からはブーイング、記者からはマナーの悪さを取り沙汰される野良犬扱いのマッケンロー。
明暗を分かっているが、世間の夫々の扱いが彼らのプレッシャーとなって雁字搦めにする。
紆余曲折の末に辿り着いたウィンブルドン決勝戦では、彼らを雁字搦めにしていたものを振り払うように、一球入魂でラリーを繰り広げていく。
拳を交えたら友達ではないが、自分の全てを出し切った激闘の末に訪れる2人の間に生まれる〝戦友〟のような連帯感が心に温もりを与えます。
このところテニスの〝名勝負〟を実話ベースで映画化した作品が続けて公開されていて、昔取った杵柄ではないが、私も久し振りにラケットを振り回したくなりました。