三樹夫

デンジャラス・プリズン ー牢獄の処刑人ーの三樹夫のレビュー・感想・評価

3.9
仕事をクビになった主人公は麻薬の運び屋やって、でかい家に引っ越して妻は妊娠していてもうすぐ子供も生まれてくるという順風満帆だったが、クレイグ・ザラー作品なので暗黒の気配がプンプン、特に身重の妻がいるということに嫌な予感しかしないわけだが、案の定捕まって刑務所にぶち込まれる。ただこんなのはかすり傷程度で、刑務官に嫌がらせされるのなぞ野良犬に吠えられてるだけに等しい。とっちゃん坊やみたいなおっさんが現れ、取引を壊され大損こいたことにボスはお怒りだ、妻を誘拐した、子供を手足切断されて出産させられたくなったら、凶悪犯が収監させられてる刑務所にいる終身刑の男を殺して来い、殺したところで妻を開放する保証はねぇ、と暗黒指令が下る。クレイグ・ザラー作品の特徴として死ぬことよりも辛い、苦しみを抱えたまま生かされるというのがあるが、赤ん坊の手足切断して出産というところにそれが今回もバッチリ出ていて陰惨な気持ちになる。
主人公はさっそく刑務官の腕をへし折り目的の刑務所へと移動。ナチスみたいな刑務官がお出迎えで主人公の置かれている状況が着実に悪化していく。しかし、どうやら標的の男は凶悪犯の中でもさらにヤバい奴が収容されている所にいるらしく、主人公はさっそく運動場の中にいた血の気の多そうな連中をボコボコにして、ヤバい刑務所の中でもさらにヤバい奴が収容される地下へと移動。まるで中世ヨーロッパの拷問部屋みたいなとんでもないところで、主人公の置かれている状況が着実に悪化。電気ショックからの床一面にガラスの破片敷き詰めという悪意たっぷりの陰惨な暗黒世界が広がる。

相変わらずフィックスのロングを多用したりで、低温陰鬱なクレイグ・ザラー作品だが、この映画は他と比べてわりかしポップさがあって、というのも主人公がぶれないで目的のために即行動で結構気持ちよく相手を叩きのめしているというので、観ていて主人公のタフさで陰惨さが軽減されるというのがある。ただそれも他のクレイグ・ザラー作品と比べてなので陰惨な暗黒世界なのには変わりないが。漫画みたいなキャラの主人公だったり、ナチスみたいな刑務官連中だったりで、漫画みたいキャラという所でも比較的ポップさがあるように思える。
クレイグ・ザラー作品の陰惨さを醸し出す要因として、生活感のある痛さとか嫌さがあって、今作の最初から最後まで足怪我して靴下が赤く染まっているのが身に覚えのある不快な痛さを思い起こさせ嫌な気持ちになり、陰惨な世界が構築される要素になっている。
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