このレビューはネタバレを含みます
アート・コレクターのユダヤ人虐殺疑惑を追う、記者の話。
「大富豪の所持する美術品はユダヤ人から収奪したものだった~」という事で、主人公は大富豪を取材するわけですけど、大富豪側からの買収にも乗らず、記事を公表する主人公がカッコ良かったですね。
まさに、ジャーナリストの鑑と言いますか、報道されるべき事が報道されない日本から見ると、それだけで感動してしまうものがありました。
(ちなみに、報道の自由度ランキングは日本は70 位、オランダは4位。)
結果的に主人公は雑誌社での居場所を失ってしまった様ですが、こういう人が仕事をする場を失う事は、社会全体にとっても大きな損失と言わざるを得ません。
親会社の意向に沿ってばかりでは、まともな報道は出来ないし、権力を監視するどころか、権力の犬となる記者ばかりになってしまう。
こうした傾向はどの国でもあるのだろうし、主人公の様なジャーナリストをどう守っていけば良いのかと、考えさせられるものがありました。
物語的には、主人公の取材によって、大富豪の過去が明らかになっていくわけですが、大富豪の行いは回想シーンでサクサクと描かれていきます。
この題材なら、もっとミステリー仕立てにして、引っ張る事も出来たと思うんですけど、オランダでは有名な事件なのか、わざわざ隠す必要もなかったのかもしれません。
その分、主人公に訪れる危険や妨害といったサスペンス要素が強くなっており、主人公に感情移入すると同時に、裁判の結果を最後までドキドキしながら見る事が出来ました。
それにしても、この犯人。
いくらナチスと繋がったとはいえ、一介のアート・コレクターが1000人もの人間を虐殺するのは異常だし、元々サイコパスだったんだろうな~と推察したり。
弟に罪を着せるのもどうかしてるし、弟が保険として兄の告白を文書にしてた(=家族に全く信用されていない)事も、この犯人の人間性を示すエピソードでしたね。