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判決、ふたつの希望のMaoryu002のレビュー・感想・評価

判決、ふたつの希望(2017年製作の映画)
3.5
レバノンに住むキリスト教徒のトニー(アデル・カラム)と、パレスチナ難民のヤーセル(カメル・エル・バシャ)はふとしたことで言い合いになり、ヤーセルがトニーを殴ってしまう。トニーは訴訟を起こすが、それが国中を巻き込むパレスチナ難民や宗教を巡る論争になってしまう。

国民としての帰属と宗教が微妙なバランスにあるレバノンの状況や、ヨルダン内戦からのレバノン内戦という歴史を知らないと半分も楽しめないんじゃないだろうか。
是非、レバノンのことを少し調べてから臨みたい。

一見、他愛もない原因からトニーとヤーセルの個人対個人の争いが始まるが、そのうち周りが勝手に盛り上がってしまうのは、国としての根深い問題だからだろう。
古くからのレバノンの民という自負があるキリスト教徒と、どこでも厄介者扱いされるパレスチナ難民の人々が、“そっちが悪い” “お前たちのせいだ”と罵り合い始める。

次第に過去が明らかになり、2人はともに辛い過去を背負って今に至ることを知り、人知れず緩やかに和解する。
2人が(ほぼ)許し合う様子が描かれる一方で、民族同士で憎しみ続けてしまう大衆の姿が悲しく、滑稽にも見えてくる。

とても良くできた作品だったが、希望を見せてくれたという感想には至らなかった。
残念ながら、邦題の「希望」よりも、原題の「侮辱」の方がしっくりくるなー。

主題に関係ないけど、トニーの奥さんがめちゃめちゃ美しい!
“生まれてくる娘に怒りと憎しみに満ちた世界を見せたくない”という彼女の純粋な想いが、真のメッセージではないだろうか。
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