映画好きの柴犬

判決、ふたつの希望の映画好きの柴犬のレビュー・感想・評価

判決、ふたつの希望(2017年製作の映画)
4.2
たしかに、そこに希望はある

 反パレスチナのキリスト教徒レバノン人トニー(アデル・カラム)と、ムスリムのパレスチナ難民工事現場監督ヤーセル(カメル・エル・バシャ)の間に起こった工事をめぐる些細なトラブルが、国家を二分する裁判に発展していく、法廷ドラマ。

 アカデミー賞外国映画賞にノミネートされたレバノン映画。これはいい映画。「傑作」っていうようなズンとくる感じじゃなく、スリリングなオープニングから結末まで、淀みない流れに感情が乗せられて、気持ちよく見終われる作品。

 吉田恵輔監督の「空白」のような頑固親父の諍いが、弁護士たちの思惑もあってあれよあれよと民族間の論争にまで発展。本人たちはこんなはずじゃなかったと戸惑うばかりだけど、引くに引けず。この話の広がっていく流れが恐ろしくスムーズで、それゆえに自分じゃどうすることもできない感が半端ない。

 それが、あることをきっかけに収束に向かっていく終盤は、若干予定調和な感じはするけれど、そこまでに二人の人間味が十分表現されているから、素直に感動できる。そして、その「希望」が広がることを願わざるを得ない。