重いテーマを扱いながら、入り口はごくごく私的な紛争ってのがうまい。
身近にも思えるトラブルを「なんだなんだ」と眺めていたら、あっという間に大統領まで仲裁しようとするほどの大裁判の法廷ドラマに引き込まれる。
気づいたら政治、思想の象徴にされていた当人たちの困惑がよく理解できるし、
スタート地点の小さなトラブルから眺めているからこそ、出自に大きな違いがあっても、当人たちはお互い感情を持った人と人ってのも痛いほど感じる。
トニーがヤーセルの車を直すシーン、ヤーセルの罵倒からの「すまなかった」、最後の目を合わせるシーン、どれも人としての温かみを感じて泣きそうになる。
そして、当人たちを人として見られるからこそ、歴史的背景を深く知らなくとも痛みは強く感じられた。
パレスチナ難民やレバノン内戦くらいなら知識としてなんとなく知ってます、程度の自分でも楽しめた。
恐らく、この辺の歴史を全く分からなくても、劇中の情報だけである程度の理解ができるし、登場人物たちの感情も理解できると思う。
入り口の入りやすさと、心震わせる役者の演技と、法廷ドラマ演出の感情揺さぶる感、どれもよかった。
