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判決、ふたつの希望のColのレビュー・感想・評価

判決、ふたつの希望(2017年製作の映画)
4.0
“なんていい映画をみたんだろう”

割と最上級の余韻をシンプルに与えてくれた作品は久しぶりかもしれない。非常に清々しい気持ちに満たされた。

「ただ、謝罪だけが欲しかった。」

というコピーが気になり鑑賞。レバノン出身男性のトニーと、パレスチナ出身のヤーセルの細やかないざこざから国・政治を絡めた裁判、社会問題と発展するストーリー。正直自分はパレスチナ問題の社会情勢に一般的な素養しかないので語るほど稚拙な部分が露呈するのでその部分には触れないが、映画的な観点から言えば、裁判により2人の過去掘り起こされ新事実が発覚される度行方がきになるストーリーが秀逸。その新事実はすべて政治であり宗教・戦争が起点であり、事件を起こした彼らの思想や行動に直結していた。それを知るたびに締め付けられる心。誰が悪人とは言い切れない収集のつかない事態。そんな中裁判を進めるほど過熱する外野たち、そして取り残された当事者二人。きっと観ている側もその当事者と同じ気持ちになっただろう。

そんな事態もラストを迎える。どう終わるのだろう不安によぎったがそのラストが非常によくできていた。映画的な予定調和で終わらず、ハートフルで有りつつも過剰すぎず、訴えたいテーマがシリアスに伝わったもっとも落としどころのいいラストに。

こういった形ではないと遠い国詳しい社会情勢を知ることができない人達を、映画の魅力を媒体に難しいアプローチ無しに感動と問題定義を打ち立てられる作品を作った制作陣を素直に賞賛したい。
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