AkikoNakayama

判決、ふたつの希望のAkikoNakayamaのネタバレレビュー・内容・結末

判決、ふたつの希望(2017年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

(もう一度ちゃんと観たい)

個人の諍いが差別や内戦の記憶を引き連れ、国家の一大事へと発展する。目まぐるしい展開と明かされる事実により、観客の事件に対する眼差しは「喧嘩両成敗」「ヘイトクライム」「傷を負った人々の戦い」と変化し、心を揺さぶる。まるで法廷の動向を注視し、熱狂する国民の視点を追体験させるかのようだ。着目したいのは、裁判長と弁護士の1人が女性であることだ。性差別の根強いアラブ圏のなかで、近年のレバノンは女性パイロットや大臣職が続々と生まれている。彼女らもまた「傷を負った者たち」の戦いを越えてきたのであろう。国家を揺らすまで広がった風呂敷は、言葉なく見つめ合う2人のカットで決着する。争いはあくまで、傷を負った人々による戦いであるとの示唆を感じさせる。宗教や人種の対立を表面的になぞることなく、多層的に描く作品。
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