ちろる

ジュリアンのちろるのレビュー・感想・評価

ジュリアン(2017年製作の映画)
3.5
11歳の少年ジュリアンの視点で描かれる父親と母親の離婚。
全くもって言い分の異なる父親VS母親の離婚調停での結論は共同親権として父と母の家を行ったり来たりする事になる。

明らかに父親を拒んだジュリアンの声明も虚しく、父親の車に乗り込む事を誰も拒否できないのは、役所の怠慢によるものに違いない。
子どもの言葉がなによりも大事なのに、調査をするのが面倒臭いのか、簡単に「共同親権」逃げ込むのかもしれない。

とにかくジュリアンのあの、追い詰められたような表情に始終こちらも緊張感が抜けない。

離婚してもなお、母親を支配と管理しようとする父親の異常性は幼いジュリアンにもきっと伝わってくるのだろう。
自らが攻撃されるかもしれない危険を冒しても、『嘘』をついてなんとか母親を守ろうとするのが見ていて辛い。
あの調停の杜撰な決定さえなければこんなジュリアンが週末に毎回恐ろしい思いをする必要がなかったのだ。

父親は見るからにデカくて、まるで凶暴な熊のようなのに、そんな奴がラストに向かうにつれて彼のモンスターっぷりが増長していく様子はほんと下手なそこらのホラーより全然怖い。
怖すぎてギャーギャー叫んでしまったほど。

離婚自体はどこにでも起こりうるもので仕方ないとしても、幼いジュリアンから笑顔を奪ってしまったのはDVを見抜けなかった役所の怠慢だ。
おそらくジュリアンのトラウマは一生消える事はなく、彼の子どもらしくいられる時間を奪ってしまった大人たちの罪はとても重い。

決して楽しい作品ではないが、考えさせられる。
今もどこかで、こんな風にジュリアンのように怯えている子供がいるのかもしれないと思うと、胸がキリキリと痛んだ。

欧米では多い『共同親権』っていいよねって思ってけれど、これを見ると考えさせられる。
日本の母親優勢の親権ももちろん考えなければいけないけれど、何よりも「子ども」の思いを最優先にすることを忘れてはいけないと改めて思いました。
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