いち麦

最初で最後のキスのいち麦のレビュー・感想・評価

最初で最後のキス(2016年製作の映画)
5.0
底抜けに明るいロレンツォの妄想、ヒット曲に乗せカラフルなファッションで魅せるポップな前半から、一気に暗転していく残酷な青春譚。学校でハブにされている男女三人の共同体が見せる精一杯の反抗が堪らない。でも、その強がりが実は脆く危うい精神バランスの上に成り立っていることを知り、張り裂けそうになる。アントニオの心がロレンツォとブルーによって動き出す転換点の場面は涙が溢れそうになるくらい好き。
三人の描写はほぼ同じ重さだが、アントニオの変容や動揺が見応えあった。映画初出演の三人の中でもロレンツォを演じたリマウ・グリッロ・ルッツベルガーはクセのある美形…今後のイタリア映画での活躍に期待。

『最初で最後のキス』は、確かにホモフォビアをテーマの一つにしたLGBT作品ではあるのだけれど、それだけではない。もっと広く、人間の心と行動のアンバランスさについて踏み込んだ人間ドラマだった。
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