イトウモ

マリア・ブラウンの結婚のイトウモのレビュー・感想・評価

マリア・ブラウンの結婚(1978年製作の映画)
4.9
2023.7
ファスビンダーの中では「13回の新月」とならんで一番好き。
他のファスビンダー作品と比べても画面がとにかく凶暴。黒人兵ビリーの撲殺シーンばかり印象に残っていたが、やや頭でっかちな構成を今回は楽しんだ。
超人的な行動力で男たちを圧倒・牽引していくマリア・ブラウンは「未来が見える」「時代の先を進んでいる」と自ら豪語する割に、ナチスの軍人である夫という「過去」に繋がれている。それは決してナチスという固有名詞ではなく、人々が忘れ去ろうとする時代とつながれてこそ、今の時代の常識を外から生きる彼女のダイナミズムをつくりだす。
凶暴な画面で彩られた映画は画面街の事件で終わる。ガスの抜ける音、ラジオ、爆音、叫び声。ドイツの敗北を生き延びた夫婦がドイツの勝利で終わるのだ。あの火事は二人の死であるよりも、集めた財産を薪に焚べて燃やす祝祭の炎に見える

2012.12
こんなヒロインが出てくる映画、滅多に会えないのでなかろうか。文字通り戦火を浴びながら結婚式を挙げたマリアの夫は次の日にもう戦場へ旅立っていく。以後、幾人かの男がマリアの周囲を取り巻くが、彼女は徹底的に女であることを行使して自分の人生を獲得する