にく

IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。のにくのレビュー・感想・評価

2.0
“it”(ついでにいうと“us”もだけど)とは「過去」の別名に過ぎず、しかもその過去が、ルーザーズ以外の人々が住む世界、引いては我々観客のいる世界とまったくつながっていない。というか、この映画には、主人公らにとっての「他人」が一人も登場しない(実際、他人然として登場する面々は、itの化身か、カメオ出演する身内ばかりである)。
 結局、ルーザーズのトラウマを地下世界のピエロというさして目新しくもないフィギュア(形象)に落とし込んだ挙句、これと彼らを対決させ駆逐するだけの話で、見ている我々が彼らのトラウマ、両者の戦いに共感できるかは別問題なのである。
 クトゥルフものとしても、それが世界全体を滅ぼす存在として登場するのでなければ、“it”は単にルーザーズ世代にとっての「無意識」、回帰する「アブジェクション」、つまりは手垢のついた精神分析的クリシェたるに留まるだろう。
 っていうかさ、俺は怖いぜ俺は怖いぜって出てくる奴ほどさ、怖くなくない?弱くない?
にく

にく