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ファウストのScriabinのレビュー・感想・評価

ファウスト(1994年製作の映画)
5.0
シュヴァンクマイエルらしさだけに留まらない、前衛映画としてのファウスト。音の少なさはブレッソンらしく、虚構と現実を行き来するような構想はマルコヴィッチの穴やDr. パルナサスの鏡にも通じ、原作の持っていた衒学的な雰囲気も再現されつつ(だからこそクエイに最も近い作品だと感じられる)、シュールな場転やズームアップはオッティンガーらしかった。

とにかく発想が好きすぎる。ファウストは元々演劇であるということを思い出させる演出。枠構造が大好物なのでそれだけでもう好き。ソクーロフのファウストも始まり方は枠っぽかったかも。というか原作自体が枠っぽい。フレスコの中にいるのはホムンクルスならぬゴーレムだった。シュヴァンクマイエルがいつも使ってる粘土は「土塊」だったんですね。

とはいえシュヴァンクマイエル好みのモチーフもよく出てくる。相変わらず不味そうな食べ物や、おじさんの皮脂と毛穴、安酒。あの土塊悪魔は寄生獣の元ネタなのか?なんでリスカするの?傷んでぼろぼろになった人形たちはやはりクエイを思い出させた。

満を持してムルナウのファウストを見ます。
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