Vega

アケラット-ロヒンギャの祈りのVegaのレビュー・感想・評価

3.9
ロヒンギャの祈りというサブタイトルで、ロヒンギャの難民問題に切り込んでいくものと思い込んでしまうのが難。
後半ロマンスに傾き、作品全体がまとまりを欠くようにも思えるが、しかし時間を置いて反芻するうちに、このとっ散らかりぶりがこの監督の面白さなのかもと思えてきた。
エドモンド・ヨウ監督、見た目ほんわかだけど、かなり尖った人なのかしらん。

マレーシアの森林で200人以上の遺体が発見され、その遺体は移民として渡ってきたロヒンギャ族であり、マレーシア人によって埋められたものだったという事実をニュースで知ってから、この問題を取り扱わねばと思ったと監督が語っていた。

アケラットとはロヒンギャ族の言葉で「来世」のようなものらしい。
光を求めてマレーシアに渡るボートピープルと、マレーシアから出て行く若者たち。こことは違う場所を求める人々。

ロヒンギャ問題は人間の残虐性の象徴として描かれている。
この世界のあちこちに存在する悪におそらく間接的に加担しているのだという落胆と無力感、生きることの息苦しさや気持ち悪さ、縛れれて抜け出せぬ不自由さを感じつつ、詩的で叙情ある画面を眺めるという不思議な作品だった。
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