ジミーT

SUNNY 強い気持ち・強い愛のジミーTのレビュー・感想・評価

SUNNY 強い気持ち・強い愛(2018年製作の映画)
5.0
最初にこの映画について聞いた時の驚きは「アメリカン・グラフィティ型青春回顧映画」がついに90年代後半を回顧する時代になってしまったという驚きでした。

「ラスト・ショー」(71年製作)が50年代の青春を回顧し、「アメリカン・グラフィティ」(以下「アメグラ」73年製作)は62年を回顧する。 

「グリース」(79年)はミュージカルという形で50年代を。

「ビッグ・ウェンズデー」(79年)が62年、65年、68年、74年を。

「アニマル・ハウス」(79年)はパロディとは言え62年を。

「ワンダラーズ」(79年)が63年を。

「抱きしめたい」(78年 日本公開81年)は64年を。

「さらば映画の友よ インディアンサマー」(79年)が69年を。

「アメグラ2」(79年)は64年、65年、66年、67年を。

「ヘアー」(80年)がミュージカルで68年を。

「スタンド・バイ・ミー」(86年)でちょっと戻って59年を。

「ファンダンゴ」(86年)が71年を。

という感じで回顧する年代が下ってゆきます。さらに下ります。

「波の数だけ抱きしめて」(91年)が81年を。

「ロミーとミッシェルの場合」(97年)は80年代を。

そしてこの映画の原作「サニー 永遠の仲間たち」(11年)が85年を回顧し、ついにこの「SUNNY 強い気持ち・強い愛」(18年)で90年代後半回顧にたどり着く。

いや、わかってます。90年代後半は既に20年以上も前の世界ですから、当時高校生だった人にとっては充分にグラフィティ。これでよいのですが、私にしてみたら90年代はほんの昨日のこと。と思っていたら、「あの頃。」(21年)という映画はなんと00年代を回顧する青春映画らしい(これ観たいなあ)。
やはり時代は移り過ぎて、戻ることはないのでしょう。

つまり何が言いたいのかというと、2020年から2023年に高校生だった人が映画の道に入り、コロナ禍で一変した3年間の青春を10年か20年後に描くとしたら、どんな「アメグラ型青春回顧映画」になるだろうかということなのです。
そういう映画は作られるでしょう。いや、ぜひ作ってほしいと思います。必ず観ます!
これが結論です。

さて、この「SUNNY 強い気持ち・強い愛」なのですが、どうしても気になるセリフがあったので、記しておきます。

現在の主人公たちが喫茶店で話してると、隅の席で高校生たちがたむろしている。たむろしてはいるけどそれぞれスマホを見てばかりいて会話がない。
それを見て、現在の主人公たちが「最近の子たちは元気がない。私たちが若い頃はもっとワイワイ元気にやってた。」というような内容のことを言います。要は「最近の若いもんは発言」です。いや、それはいいんです。私も言う、誰もが言うことだし、何千年も前から言っていたことですから、登場人物が言っていることであれば何の問題もありません。
ただ、このシーンではこのセリフが映画のメッセージにも聞こえてしまうんですね。もしこれが映画のメッセージなら「『最近の若いもんは』を言いたくて映画作ったのか!」となってしまい、命取りになりかねません。
まさか映画のメッセージではないとは思いますが、脚本上か演出上、どこかにミスがあったような気がしてなりません。
この映画は大変面白い秀作です。だからこそこの点がどうしても気になるのです。

私が偏愛する「アメグラ型青春回顧映画」にまた新たな秀作が加わったことにスコア5.0。

追伸1
こう考えてみるとあの「地獄の黙示録」は究極の「アメグラ型青春回顧映画」だった気がします(笑)。
そういえば、79年「地獄の黙示録」が最初に公開された時のパンフレットに、映画評論家の荻昌弘氏が「超絶的な青春映画」と書いていて、「何言ってんだ?」と思ったものですが、今になるとナルホドと思える点もなくはないですね(笑)。
それを言ったら「プラトーン」や「ライト・スタッフ」もそうだ。いや、あまり範囲を広げるのはよしましょう。

追伸2
「アメグラ型青春回顧映画」で近年の大傑作はなんと言っても「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」です。
観たいと思いながら今まで未見なのが「再会の時」と「ダイナー」。

参考資料

映画パンフレット
「SUNNY 強い気持ち・強い愛」
「地獄の黙示録」(79年)
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