ちろる

鍵のちろるのレビュー・感想・評価

(1959年製作の映画)
3.8
谷崎潤一郎の欲望を映像化させた、いやらしいけど見せないエロ。
変態夫婦のメロドラマかと思いつつも、ラスト30分くらいから一気にサスペンスに変貌を遂げる。

上品なように見えてえげつない、張りぼての家に住む張りぼての家族。
皆の思惑はそれぞれ心の奥底の見えないところに鍵がかけられて、死ぬまで開けることはできない。
もしも、あの世というものがないのなら、登場人物みんなのえげつない心の鍵は開けられることなく、皆幸せに終わるけど知ったら最後、再び人現に生まれ変わるのすら怖くなると思う。
肉欲も、名誉欲も、金欲もだれかを騙したり貶めるために生まれたものなら悲劇が起こるのかもしれない。

ちなみに確かに色っぽいのかもしれないが、郁子役である京マチ子がお風呂でも、寝てる時もはみ出したアイラインのはっきりメイクの不自然さにはラストまで慣れることが出来ず恐怖でしかなかったし、ハナ役の北林谷栄の得体の知れない老婆感が後半になるにつれて不気味さが高まって怖い市川崑ワールド。

ダークファンタジーなのかブラックコメディなのか色んな要素が混じりあった仕上がりは上記のヴィジュアルイメージも含めてそれなりに楽しめた。
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