さすらいの用心棒

妻よ薔薇のように 家族はつらいよⅢのさすらいの用心棒のレビュー・感想・評価

3.7
三世代で暮らす家族。ある日、夫の暴言に愛想をつかして主婦が家出。家族は大混乱に─────

家族が家族であり続けることの難しさを描いてきたシリーズ第三弾。熟年離婚、無縁社会と高齢者ドライバー、というテーマに続いて、本作では「主婦への讃歌」を描く。
専業主婦の世帯に比べて共働き世帯数がほぼ2倍になり、どうして今このテーマを取り上げたのだろうと不思議だったけど、成瀬巳喜男監督『妻よ薔薇のやうに』へのオマージュが込められているとわかって何となく納得する。小津安二郎監督『東京物語』のリメイクから連なるシリーズが、とうとう成瀬巳喜男も包括するとは。
いかに主婦が大変か、母親という役割がいかに家族を支えているか、ということを改めて認識させられる映画だったし、シリーズの中では一番見ごたえがあった。
また、『めし』『お茶漬けの味』『早春』といった「夫婦の危機」を描いてきた古典映画の系統を丁寧に汲んだ作品でもあり、いまでもこういう映画が出来るのかという感動もあった。山田洋次監督だからこそ出来たことだろう。