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アンダーグラウンド 完全版のiiのレビュー・感想・評価

5.0
5時間も尿意と食欲がなければ余裕な面白さ。通常版ではないシーンが3時間分ほど追加され、物語を太らせて分かりやすくしている。編集一つでここまで変わるのかという印象。ナタリアの苦しみや地上でのマルコ、地下でのクロたちの生活がよりよくわかった。また、観るの3回目でより見えてきたこともあった。

以下ネタバレ含みます。

・冒頭、銃を乱射しながらクロとマルコと音楽団が街を走り抜けるシーン、おそらくクロは黒のスーツを肩にかけ白のシャツ一枚、マルコは黒のスーツ。この後の物語の二人の行方と視覚的にも光と闇ということで、この時点で二人の明暗を提示していたように感じた。

・三人で肩を組み歌いながら回転するシーン。「真昼の暗黒を誰も知らない」というフレーズはクロたちの地下での生活を表してるが、ナタリア、マルコもある意味(共犯で人々を地下に閉じ込め、二人は名誉や地位、富を得て地上で人々の太陽的存在にはなれたのかもしれないがそれは真っ当なやり方で勝ち取ったものではなく真夜中での太陽的な存在だから)真昼の太陽にはなれなかったのではないか

・物語の終盤(それでも残り1時間はあったけど(笑))ナタリアが地下に送り込まれマルコも参加するヨヴァンの結婚式のシーン。ソニーが戦車に乗り込み虚構を解体する。地下という虚構に主役のナタリアが詩人のマルコが描いた本に則り演技する。しかし、現実でも女優として虚構を演じ、マルコの夫人としても、クロの嫁としても演技を続けさせられたナタリアの不満や罪悪感や失われた青春が全て爆発し、地下と地上が一つになる瞬間、音楽団の回転はマックスに達した。

本作の主役は国なのかマルコなのかナタリアなのかクロなのか、はたまたイヴァンとソニーなのか、、、。完全版では虚構が解体されてからはイヴァンとソニーのシーンが多く感じた。彼らの目線から戦争をみると分かりやすい構図にみえた。イヴァンはドイツで医者に囲われ地下で二十年過ごしたという貴重なサンプルとして授業に出されているが、そのシーンの彼の表情がたまらなかった。彼は精神異常者ではなく極めて真っ当な、純粋な一番の被害者なのだ。授業で医者にいじられ生徒に笑われるシーンには憤りを感じた。ナタリアの弟のバタもまた被害者である。地下に戦況を報告するラジオが繋がれていて、その放送をしていたのはバタだったのである。通常版ではマルコがサイレンを鳴らすシーンしか流れていなかったと思う。バタの臨終のシーンもナタリアがなぜ酒に溺れ結婚式のシーンで感情を爆発させたかがよくわかる付け足しだった。
だからこそ、海から牛が上がり主要キャストが一堂に会して陸が離れていくラストシーン、踊るバタとカメラ目線で最後の台詞を言うイヴァンの二人が際立って見えた。

「許そう、でも忘れないぞ」

「この物語に終わりわない」
そして
「この物語を語ることにも終わりはない」
ii

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