ナガエ

アース:アメイジング・デイのナガエのレビュー・感想・評価

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いやー凄かった!
別に普段は、「自然の雄大さが云々」みたいなことってそこまで関心はないんだけど、この映画は凄かったなぁ。
ホントに、「どうやって撮ってるの?」って思う映像のオンパレードで、衝撃的でした。

この映画を観ていて一番不思議に感じたことは、「次に何が起こるかが分かっていた上でカメラワークを決めているように見える」という点です。
映画とかドラマなら、そりゃあ分かります。役者にこう動いてほしいという指示をして、それをベースにカメラワークを組み立てるでしょうから、「次に何が起こるか分かっている」し、その上で想定した動きを撮ることが出来る。

でも、自然相手だとそうはいかないじゃないですか。

例えばこの映画の中で、キリンの決闘のシーンが出てくる。少なくとも僕には、「キリンがこれから決闘するぞ」なんていう予測が出来るような気がしないんですよね。でもこの映画の中では、決闘前のキリン同士がなんか睨み合ってるような場面とか、一頭のキリン越しにもう一頭のキリンをなめるように撮るみたいな場面があるわけなんです。こういう映像は、「決闘が始まってからカメラを向ける」では当然遅いし、「決闘が始まることを予想して撮る」だけでも遅くて、「決闘が始まることを予想しつつ、その決闘シーンが最もよく映るようなカメラワークを同時進行で考えながら撮る」みたいなことをしないと無理な気がするんですよね。でも、もちろんそういう撮り方をしても、望んだ通りの展開に常になるわけがないんだから、とにかく膨大な時間を費やしながら、毎回最高の展開になることを期待しながら、愚直に地道な手順を踏みながら撮影した結果なんだろうなぁ、と思いました。

あと不思議だったのは(映像の撮り方的に不思議なことは色々あるんですけど)、ガラパゴス諸島のウミイグアナの子供の映像です。ウミイグアナの子供は、砂の中に数ヶ月いて、しばらくしたらそこから自分で出てくるんだけど、でもウミイグアナたちが普段いる岩場までたどり着く間に、天敵であるヘビに狙われてしまうんです。そのまさにカーチェイスのような攻防を巧みに映像に収めているんだけど、不思議だったのは、どうしてそこからウミイグアナが出てくるか分かるのか、ということです。ウミイグアナの子供が、砂の中のどこにいるのかが、分かる方法があるのかなぁ。あるのかもしれないけど、常にカメラが、ウミイグアナが出てくる瞬間を捉えているから、そこから出てくるんだってことがあらかじめ分かってないといけないし、どうやったらそんなことが出来るんだろう、って思ったりしました。

あと、モンカゲロウも不思議だったなぁ。モンカゲロウって、エサを食べず、口もないらしくて、孵化してから数時間しか生きられないらしいです。3年間水中で過ごして、ある日500万匹が一斉に羽化して交尾をし、数時間で死んでいくらしいんだけど、ってことはつまりですよ、そのモンカゲロウ500万匹の群生を映像に捉えるためには、3年間の内の僅か数時間しか撮影チャンスがない、ってことですよね?もちろん、前回のモンカゲロウの群生がいつ起こったのか、ということがある程度分かれば、それなりに予測が出来るだろうとはいえ、それでも大きな賭けになるだろうな、って思います。これも忍耐強く待つしかないんだろうけど、凄いなぁと思いました。




また、ハイスピードカメラ(名称が合ってるか自信ないけど)でロケットハチドリとミツバチを撮影しているんだけど、これも凄かった。途中で雨が降ってくるんだけど、その雨粒がロケットハチドリとミツバチに当たる瞬間を撮ってるんですね。僕のイメージでは、ハイスピードカメラって、カメラ自体を急に動かしたりするとうまく映像が撮れないような気がしてて、だから基本的には画角を固定して撮るものだと思ってるんだけど、だとすると、固定した画角の中でたまたまそういう雨粒が当たる場面が撮れるまでじっと待ってるしかない、ってことになるような気がするし、それも凄いなぁ、と。

他にも、雷が鳴り響く様をバックに画面を覆い尽くすほどのコウモリの群れを撮影した映像なんかはホントに綺麗だし、あるいはヒグマが幹に背中を擦り付ける映像はチャーミングで可愛かったし、普段は絶対観られないようなグッと来る映像がたくさんあって、観て良かったなと思いました。
ナガエ

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