オトマイム

カメラを止めるな!のオトマイムのネタバレレビュー・内容・結末

カメラを止めるな!(2017年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

面白かった!作り手の熱と愛が充満していた。これが"10年前のカルト的人気映画"とかになってからじゃなくて、できたてホヤホヤのリアルタイムで観れたのはほんとうに嬉しいヽ(´ー`)ノ
本作の魅力はなんといっても、いいものを作ろう、自分たちの作りたいものを作ろうというホットな思いが凝縮されているところだ。血流がダダっと流れてるかんじ。だからハプニングさえ輝いている。迫真の、という言葉も陳腐に思えるほどのギリギリの演技ってなんてすがすがしいの。

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映画ってアイデアが出尽くした感が実はあって、やっぱり古典の名作が面白いと思うのは新作をみてもどこか、何かの焼き直しにみえてしまうから。もちろん全部とはいわないけれど。
上田監督はそれでも、誰も見たことがない、新しいものを作りたくてTVの要素を取り入れたのでは。これってある意味、禁じ手だと思う。つまりこれは《映画制作の映画》じゃなくて《TVドラマ制作の映画》なんですよね、当然ながら。危うく騙されそうになるけど。
言うまでもなく映画に生放送は存在しない。逆に言うとTVの強みはそこにある。この作品は、映画にはありえない《生放送》の臨場感・緊張感をマックスに取り入れて、なおかつ複層構造にして映画的なものに仕上げているわけです。そこが面白いし、ある意味ずるいともいえる。それを圧倒的な緻密さとスピード感でみせてくるのは監督の手腕でしょう。
(芝居の要素を取り入れて目新しさを出した映画では『At the terrace テラスにて』が思いつく。これも面白かった。)

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見終えてから私はなぜかゴダール『勝手にしやがれ』のことを考えていた。ヌーヴェルヴァーグ黎明期の1960年作。厳密な意味でのシナリオは存在せず、その即興演出が映画の革命といわれた作品。ゴダールにとって映画作りとは、自分では思いもつかないイメージを創造するためのきっかけなのだという。

本作はもちろん即興演出ではなくむしろその対極にある。だけどどれほど緻密な脚本があっても用意周到にカメラワークを計算していても絶対にハプニングは起こりうるし、イメージが一人歩きする瞬間もある。そしてそれが時に作品に血を巡らせ観る人の心を動かすことを上田監督は知っていて、心のどこかでそれを望んでいたのじゃないかな。ゴダールの即興演出が必然的に作品にドキュメンタリー性を介入させ生命力を与えた、そんな棚ぼた的なきらめきを待ち望んでいたと思う。
だから両作品とも、生命がほとばしるようなフレッシュな"今"をカメラにおさめたという点では同じだと思うのだ。頭の中に見えている画面を飛び越えた"今"が作品になって観客に感動を与えたのだから。

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こんなふうに色々考えちゃう映画なんだけど、理屈は抜きにしてとにかく楽しい作品でした。それだけは間違いなし、です(ت)♪