あくとる

ファントム・スレッドのあくとるのネタバレレビュー・内容・結末

ファントム・スレッド(2017年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

減点法で評価して100点、と思わず言ってしまうほど欠点が見つからない、恐ろしく完璧な映画。
しかし、その一方で加点法ならば100点には到底収まらないような圧倒的な美しさ、凶悪さも秘めた映画です。

予告から想像していた内容を、"毒キノコ"以降どんどん逸脱していき、思わぬところに着地。
撮影から美術、音楽に至る全てが思わず嗒然としてしまうほどリッチな美しさ。

恋愛や夫婦という関係に限らず、普遍的な人間関係のあり方についての話。
相手に何を求め、何を提供するのか。

徹底したルールを強いることでアルマを押さえつけようとするワガママな男、レイノルズ。
ルールに従うことでレイノルズが必要とする女であろうとするアルマ。

前半での二人の関係は"毒キノコ事件"を経て崩壊し、あるべき姿に再構築されていく。
毒によって倒れたレイノルズは自身を介抱するアルマに"執着していた母親"の姿を重ね、次第に支配関係が逆転し始める(アルマがわざとらしく音を立てる食事シーンに思わず笑った)。

ラスト、"バターたっぷりのオムレツ"。
(この映画でも特に強烈なシーンであり、二人の表情、やり取りが素晴らしい!)
レイノルズが真に求めていたものを与えるアルマ。
心を乱し続けていたレイノルズの心に平穏が訪れる。
ときには毒こそが愛に成りうる。

外から見ると歪かもしれないが、これこそが二人にとってベストな関係であり、ハッピーエンド…なのだと解釈しました。