螢

ファントム・スレッドの螢のレビュー・感想・評価

ファントム・スレッド(2017年製作の映画)
3.8
マザコンのモラハラ系オート・クチュリエ男と、彼が理想のモデルとして見出したメンヘラ女。そんな二人の異質な毒そのものの愛を描いた作品。

1950年代のロンドン。
一流クチュリエとして国内外に名を馳せていたレイノルズ。
彼はある時、公私に渡って彼を支える姉シリルの勧めで田舎の別荘へ行くことに。
道中立ち寄ったレストランでウェイトレスをしていたアルマは冴えない女だったが、彼にとっては理想の体型を持つ女性だった。
二人はすぐに恋に落ち、アルマはモデルとして働くとともに、彼のメゾン兼自宅で暮らし始める。

レイノルズを独占したいアルマ。
けれど、レイノルズはアルマの思い通りにならないどころか、彼が長年築き上げてきたルールを乱すアルマに怒りをぶつけることもしばしば。

そしてある日、シリルの忠告を無視したアルマと、レイノルズの溝が決定的になった時にアルマが取った行動は恐ろしいもので…。


シンデレラストーリー感全開のロマンティックな恋が唐突に始まったかと思えば、束縛、偏執、狂気、優位性の逆転、嫉妬、共依存…と、あれよあれよと転がり落ちていく怒涛の展開。

優美で華やかな映像と静かな音楽で構築された世界なのに、形容しがたい不穏な空気が常に滲んでおり、鑑賞者の目と不安な心を掴んで最後まで離さない。

迫り来る破滅を楽しむような二人の遊戯性に満ちた最後の姿は、ちょっと腑に落ちない点もあるのだけど、完全に二人だけの世界に入った…からなのかな…。

好みは分かれそうですが、毒々しい愛を楽しめるタイプの人にはお勧めしたいです。
螢