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ウィンチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷のStroszekのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

以下、挿入している事実に基づく情報は『ゴーストランド』(コリン・ディッキー, 国書刊行会, 2021年)参照。括弧内の数字は参照ページ数を示す。

ウィンチェスター屋敷はディズニーのホーンテッド・マンションやスティーブン・キングの『ローズ・レッド』、『呪われた町』、『シャイニング』の着想源になっている(69)。1866年に一人娘アニーを、15年後二夫のウィリアムズを亡くしたサラ・ウィンチェスターが、有名霊能者アダム・クーンズの降霊会で、以下のように告げられたことがきっかけとなっている。「ご一家はウィンチェスター銃で殺されたすべての人々、とくに「西部を征服した銃」で殺された先住民の霊に取り憑かれている、霊を寄せ付けない方法はただ一つ、決して完成することのない家をこれから建てて、果てしなく工事を続けることだ」(69-70)。

しかし、アダム・クーンズという霊能者が実際した証拠、サラが霊能者に会った証拠は残っていない(71-72)。

映画内で13本の釘でできたばかりの部屋を封鎖し霊を閉じ込める描写があるが、1895年3月29日の『サンノゼ・デイリー・ニュース』紙の記事「奇妙な話ー家が落成したら死ぬと思い込んでいる女性」内の「新たな部屋がたちまち完成してもーしかも、そのすべてに最新型の最も近代的な付属品が使用されているのだがーこの上なく優雅な家具が備え付けられたあとは閉ざされ、ほとんど使われることはない」(84)という記述に基づくものと思われる。

同じ記事内に、「ミス・ウィンチェスターは姪と二人きりで大邸宅に住んでいて」(84)とあった。姪マリオンの息子ヘンリーは創作だったのだろうか。「ヘンリー」は、南北戦争の末期にウィンチェスター機械工により開発されたウィンチェスター連発銃の愛称らしい(74)。

『ゴーストランド』を読んだ後だと、映画は割と現実に忠実な映画化なのかと思えてくる。サラが特定の霊媒に傾倒していた痕跡はなく、設計は真夜中にサラ自らが行い、ビジネス上では有能な実務家として描かれている点など、この本の記述と一致する。

「西部を征服した銃」と呼ばれていたのでインディアンの幽霊が多いのかと思ったら、南北戦争で命を落とした兵士の霊がメイン悪霊であった。インディアンや黒人奴隷の霊はガーデンハウスや階段くらいにしか出てこない。サラも白人ならウィンチェスター本社から派遣される精神鑑定医エリック・プライスも白人、召使も建設関係者も白人揃いである。要するに、メインキャストに有色人種がいない。たまに出てくると壁に並んで立つモブ幽霊扱いである。幽霊もホワイトウォッシュされている気がした。
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