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ゲティ家の身代金の教授のレビュー・感想・評価

ゲティ家の身代金(2017年製作の映画)
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胸糞悪い映画を好んで観ているけれど、久々に心から胸糞悪い!と狂喜乱舞して観た。
昔から、大金持ちの権力者は大抵クソミソに描かれているものだが、その中でもトップクラスにゲスいゲティ祖父さん。

当然取り巻く人間たちはポンコツばかりだし、イケメン担当のマーク・ウォルバーグだって、かの「アマルフィ」の黒田康作ばりに無能(まぁ、最後の最後の王手を決めたのも彼ではあるけれど)。
上流階級というか。桁外れの金持ちの、何が面白いのかわからない闘争と執着の地獄絵図を浮き彫りにさせる誘拐事件。

とにかく画面づくりカメラワーク編集は優雅で格式高いし、絶妙な楽曲、音楽使いに対して描かれる物語はとにかくゲスでクズで、人間の尊厳なんてズタズタ。

来客用の公衆電話とか。ゲティ祖父さんの徹底した執着ぶりと、そのくせ「別に金を稼ぐのが楽しいわけじゃない感」を嘯く姿。
これぞリドリー・スコットの得意とする「もはや自分の力や意思ではどうにもできない」という事態が一旦動き出したらもう、それは既に「詰んでる」という物語。

そして事件は解決しても。
後味が優れないのは、ゲティ祖父さんが信じるというその「人が作ったもの」になってしまって永遠になってしまったのと。
そこに嗚咽を隠せない、ミシェル・ウィリアムズの未来。なのである。
悪夢は終わらず、王位が継承される、というまるで黒沢清の映画のような、秀逸のホラー・コメディの傑作。
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