りっく

工作 黒金星と呼ばれた男のりっくのレビュー・感想・評価

工作 黒金星と呼ばれた男(2018年製作の映画)
4.5
北朝鮮と韓国という絶妙なバランスで成立している関係性と、立場や情勢によってそれぞれの思惑が複雑に絡み合う超一級品のポリティカルサスペンスであり、あまりにも熱い組織に属する男同士の感動ドラマ。そんな一筋縄ではいかない人間関係や目まぐるしく変化する展開を見事に捌きエンターテイメントに昇華した作り手に拍手。

北朝鮮が核兵器を保有しているか探るべく韓国から送られるスパイ。バレてしまうか否かというスリリングな展開の山場として金正恩と謁見させる場面を持ってくるあたりが凄い。それでいて、丁寧に積み上げた作戦の遂行以前に、自らが属している組織という足場自体が崩壊する危険に晒されることで、政治利用される兵隊が世論や民意という目に見えない巨大な力に飲み込まれてしまう無情さを残酷に突きつけてみせる。

また面白いのが、北朝鮮も共産主義者である金大中が大統領に当選することを必ずしも望んでいないという意外な点を、きちんとしたロジックを持って物語に組み込んだことで、さらに捻りの効いた展開を生み出したことである。

各々が置かれた立場上で現状を好転させようと志を持って足掻くが、もはやどうにもならないところまで追い詰められる男たち。文字通り星屑となって消されてもおかしくない男の存在や功績を、時間を経て作り手は最大級の敬意を持って輝かせてみせる。その粋に泣かされる。
りっく

りっく