「クリストファーロビンがどんな大人になるか分からない」というラストの切なさがプーを語る上でとても重要だと感じている私的に、だいぶハードルを上げて見に行きました。あんまり予想は超えなかったかなあ…。
ハンソロと同じで、続き物の公式設定が提示されることで世界観が固定化される物足りなさの方が先に来てしまった印象でした。そのモヤモヤが気にならないくらい娯楽として面白かったら良かったんですが。
ズオウの下りは抜群に良かったです。恐怖心の写し鏡であるズオウと向き合い、文字通り「自ら」乗り越えることで本来のクリストファーロビンとして再生する。雨の夜の悪夢だったのもアニメの再現っぽい。
クリストファーロビンの心象風景が舞台であり、彼の様子を描いた本を我々が読んでいるという多層構造はきちんと維持されていて、それ故に100エーカーの森もロンドンも灰色で統一されています。赤い風船が配色的にも唯一のキーになっていたようですが…。
全体に絵的なメリハリも、物語的な勢いも弱かったように感じました。かつて宇多丸師匠は劇場版プーさんを「全員がボケ倒すアバンギャルドなドラッグムービー」と評しましたが、そういう(AAミルン原作版でなく)ディズニーらしいプーシリーズのぶっ飛び感が無い。
美しい自然の中で幼児的な暴力性を伴ってケーキを食い荒らす姿と、テーブル下で足がぶらぶらしているあざといカットを交互に見せる冒頭は攻めてる感じがしておおっと思ったんですが、それ以降は淡々としてたなあという印象でした。
ロビンが改心してからのロンドンでもっと楽しくエンタメして欲しかったです。都会の「大量の」赤い風船でプーが飛び回るとか。せっかく実写の中で非現実的なことをやるんだから、どこかで見たような鞄と車のアクションじゃ物足りない。(単純比較は出来ませんが、パディントンシリーズの成功もあるだけに)
原作は、幼児であるプーを見つめる少年ロビンを見つめる大人=我々という三層構造を持っています。だからロビンを見ても、プーを見ても純粋だった昔を思い出して胸が苦しくなる。今作は我々=ロビンに置き換えて視点を二層に減じ、ロビンをツッコミ役にしている。そこに物足りなさの原因がある気がするし、ファミリームービーであるなら、「娘への継承」というテーマを加えてもう少し強調すべきだったのでは、とも思いました(トイストーリー3と同じ話になってきますが)
プーに名言を言わせようとしすぎな感じもしました。「蜂蜜に狂って猪突猛進する中で本質を突く…こともある」くらいが本来のバランスだと思うのですが。
プー以外のキャラはみんならしさが出ていて良かったです。小説らしい言葉遊びが満載なのも楽しかった。62点。