MasaichiYaguchi

ある少年の告白のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

ある少年の告白(2018年製作の映画)
3.8
アメリカは「自由と平等の国」で、ジェンダーフリー化も進んでいると思っている人もいると思うが、“矯正施設”を題材に俳優のジョエル・エドガートンが監督第2作で描いた内容を観ていると、そのイメージが“幻想”であることをまざまざと思い知る。
2016年に発表されたガラルド・コンリーの“Boy Erased : A Memoir”を基に描いた人間ドラマでは、主人公ジャレッドが大学時代にある切っ掛けで自分が“ゲイ”であることに気付き、そのことを両親に告白したことから、本人も含めた家族の葛藤のドラマが始まる。
彼は同性愛を“矯正”する施設に入れられてしまうのだが、本作ではその驚くべき実態が明らかにされていく。
LGBTQ運動が盛んになった現在でも、アメリカでは未だに36州がそういった施設の存在を禁止していないとのこと。
ジャレッドの悲劇は、保守的な南部の出身で、更に輪を掛けるように父親が聖書を重んじ、同性愛を認めない福音派の牧師だったことにある。
“ありのまま”に生きることを否定され、人格をねじ曲げる“矯正セラピー”を強いる施設に閉じ込められそうになった彼は、遂に“限界点”を超えて“弾けて”しまう。
果たして、ジャレッドをはじめとして彼の家族はどのような結末を迎えるのか?
終盤でのジャレッドと父親とのやり取りが切なくて心に沁みる。
そして家族の分断を描いた本作のエンドロールで紹介される実際の後日談からは、この問題の根深さを改めて痛感する。