『まさかの実写化成功⁉️』
『まんがタイムきららフォアード』で連載中の人気漫画を実写映画化。
学校で生活する『学園生活部』に所属する4人の女子高生達の日常を描く。
監督は『リアル鬼ごっこ』などの柴田一成。
主演は『ラストアイドル』の阿部菜々美、長月翠、間島和奏、清原梨央。
今年も懲りずにまだまだ作られる漫画の実写化映画。
その中でも正直製作発表の時点で作り手達の正気を疑うレベルだった本作。
原作は『まんがタイムきららフォアード』で連載中の作品で、近年人気の“日常系漫画”を数多く生んできた雑誌。最近だと『ゆるキャン△』なんかがかなり話題になった。
そんなきらら系列の作品の中でも異色の作品なのが『がっこうぐらし』。
最初は他の日常系のような女の子達がキャッキャウフフする作品のように見せかけて、実はガチのゾンビものだったという衝撃が最初に強烈なフックとなっている。
アニメ版の放送当時はこの仕掛けに騙されてトラウマを植え付けられた視聴者が多数出たとか出てないとか(通称“がっこうぐらしショック”)。
話も基本的にはゆるふわな日常系的な話を持ちつつ、その裏ではゾンビにより崩壊した世界での過酷なサバイバルやキャラクターの心理描写もしっかりとした、単純にゾンビものとしてもできのいい作品でもある。
そんな『がっこうぐらし』を実写化するなんて、どう考えても上手く行く気がしないし、主役の4人に俳優経験ナシのアイドルを起用してる時点で、「また原作のネームバリューとキャストで客を釣ろうとする金儲けだけが目当てな駄作」になる思って全く期待していなかった。
ところが、実際にできた作品を見てみた率直な感想としては事前の悪いイメージを大方吹っ飛ばしてくれるぐらい普通にいい作品だった。
まず『がっこうぐらし』で1番重要な掴みである冒頭のシーン。
要は“学生としての日常”から“ゾンビのいる非日常”へと一瞬のうちに切り替わる、今までの平和な日常が崩れ去るような衝撃は上手く再現されてたと思う。
その前の学園生活部の日常も程よく描いていたし、非日常を上手く隠しつつもどこか違和感を感じるように出来ていた。
ストーリーは原作の5巻辺りまでで、1本の映画として上手くまとめてる構成だったと思う。
単に原作のエピソードを切り抜いただけではなく、映画オリジナルの要素も上手かった。
日常描写もサバイバル描写もちょうどいいバランスで構成されていて、原作の本質をしっかりと理解した上で作ってるのが伝わってきた。
この『がっこうぐらし』という作品は極限状態での人間の生きる力を描いた作品でもある。
長月翠が演じる由紀が現実を受け入れられず日常だったことの妄想の中にいるのは、そうでもしないとあの絶望的状況に耐えられないからであり、おのののか演じるめぐねえが学園生活部を作ったのも絶望的な非日常から日常へと気持ちを切り替えようとしたから。
クライマックスには例え妄想の中の存在でもその人に励まされることで再び生きる意志を持つ事ができる事を伝えている。
その点は原作やアニメ以上に強調されていて、これは上手かったと思う。
単純にゾンビものとして見ても面白く、ゾンビもののお約束的な部分はしっかりとやっている。
青春映画としてもそれぞれのキャラクターが成長し学校を卒業していく物語として十分によく出来ている。
主演の4人は演技経験がないこともあって、うまい演技とは言いがたく、序盤のうちは正直下手だったけど、話が進むにつれ上手くなっていったし、それぞれのキャラにもあったキャスティングだった。
ただ、全体的には良いところも多いけど、細かいところで多少不満が。
特にアクションの部分ではちょっとご都合的に感じる部分は多い。あの状況でどうやって生き残ったんだよ？と気になるところがいくつかある。
アイドル映画のせいかグロさもかなり控えめ。元々原作自体もグロさはほぼない作品ではあるけど、実写にすると血の一滴も出ないのは少し違和感がある。
あと、クライマックスで明かされるあるキャラクターに関する衝撃の事実があるんだけど、これをやるならもうちょっとしっかり観客を騙しにかかるように隠すべきじゃないかな？
僕はアニメ版ですでに知っちゃってたいうのもあるけど、初見の人も騙せるかどうかはちょっと疑問。
やっぱり初見の衝撃が強い作品なのは間違いないのでできればなるべく情報を入れずに見るのがオススメ。ゾンビものであるという事を知ってる程度ならまだ大した問題じゃないと思う。
あとは、予算の問題とかもあるとは思うけど、CGとかどうしても安っぽく見えちゃうところはあったかな。
とは言え、そういった欠点を考慮しても事前の予想を超える面白い作品だった。
公開前にツイッターでキャベツの件で炎上してたけど、アレはAmazonprimeのドラマ版だけで映画版のキャベツはちゃんとしてるから、それを理由に見ないのはすごく損だと思うので、是非多くの人に見て欲しい作品である。
日本の実写化もまだまだ捨てたもんじゃない。オススメです！
