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千と千尋の神隠しのmarFyのレビュー・感想・評価

千と千尋の神隠し(2001年製作の映画)
4.0
「これから先、どうしたらいいんだろう?」と途方に暮れた時に、なぜだか観たくなる作品。
受け身で無気力な少女だった千尋が、湯屋での労働や"人ならざるもの"たちとの交流を通じて、徐々に自分の意思で行動していくようになる。
千尋が電車に乗るシーンなんかは、youtubeでそこだけピックアップして観るくらい好きで、その理由とずっと言語化できないままだったけれど、あれは千尋が作中で初めて自発的に行動を起こして、外へ飛び出した場面だったんだな、と。
誰かに庇護されたり、上から与えられた役割をこなすんじゃなくて、「こうしたい」という内なる動機を実現させる場面。
この先どうなるのか分からなくて不安だけど、それでも自分の足で一歩を踏み出してみる。
そんな状況が、未来への手応えが見出せない自分の心境に訴えかけているのかな、なんて。

昔からテレビやDVDで何度も観たけれど、実は最初から最後まで通しで見たことはそこまでなかったので、今回初めて意図を持って鑑賞した。

他のジブリ作品にも共通して言えることだが、背景の作り込みがハンパなくて、「ただの背景じゃない、生活の場、労働の場」の雰囲気があらゆる場面から感じられる。
ワンシーンにちょこっとだけ映った小道具にも何かしらの意味や物語が秘められているような気がして、そこを起点にして頭の中で世界がぐわぁーっと広がっていく。そしてそれが好奇心を駆り立てる。

きっとこの先、人生の先行きが見えなくなることが幾度となくあるんだろう。
そしてその度に、この映画を観るのだろうな。
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