ブラックユーモアホフマン

響 -HIBIKI-のブラックユーモアホフマンのレビュー・感想・評価

響 -HIBIKI-(2018年製作の映画)
3.8
平手友梨奈のアイドル映画としては、これ以上ないんじゃないかと思うけど。

要素入れ込み過ぎにつき散漫。
平手友梨奈=鮎喰響を魅力的に描くことのみにほとんど特化した映画。
脇にも十分魅力的になり得るキャラクターがいるのに勿体ない。文芸部の男子2人とか完全に空気。絶対に要らない。
話としては、バクマン。とちはやふるを足したような感じだけど、両方を目指そうとして中途半端になってる感がある。
響は天才だし正論しか言わない。すぐ暴力で解決してしまうこと以外は全部正しい。正しすぎる。正しすぎることは、時に暴力になり得る。人間は普通、そんなに正しくはいられない。だから、正論は常に正義ではない。響の正しすぎることの正しくなさ、みたいなところまで突き詰めて描かれていれば、好きだった。また、響の唯一正しくないところ、すぐに暴力に訴えてしまうところ、には、響をより人間らしく描ける可能性があると思った。フロンティアが広がってたのに。勿体ない。響がすぐ暴力を使うのは、ある意味、響に幼稚さがあることを示していると思うし、書くことと話すことは違うとしても、言葉を生業とするなら、響は暴力ではなく言葉で打ちのめすべきだと思うし、それに対する納得のいく回答は、映画の中にはなかった。
まあ単に、暴力という要素を消せばよかったと思う。ロジカルな言葉を武器に世のなあなあを裁く天才がぽっと出現して、彼女の振りかざす正しさが彼女の周囲の人間たちに波紋を起こす、という話なら。響は全然人間らしくなくていいと思うんだけど。もう『CURE』の萩原聖人みたいでいいと思うんだけど。実際それを狙っていたのだとは思うけど、平手友梨奈のアイドル映画というコンセプトゆえに必要だったのであろう、15歳の女の子らしく可愛いところもある、みたいな描写が、いや確かに可愛いんだけど、映画としては余計だったと思うな。学校のシーンが丸々要らないと思う。アヤカ・ウィルソンのキャラクターは魅力的だったけど、別の登場のさせ方も出来たと思うし。
しかし、感情移入しづらい(フィクショナルな)天才というキャラクターを主人公に据えるのはやっぱりリスキーだな。バクマン。で言う新妻エイジ、ちはやふるで言う若宮詩暢が主人公みたいなものだから。バクマン。もちはやふるも、主人公は天才だけどトップじゃなくて更に上の天才のキャラクターがちゃんと設定されているのが上手いし、ちはやふるが大好きなのは実質的な主人公が凡人の太一だからで。基本的に主人公は物語の中で一番葛藤するはずなんだけど、頂点の天才を主人公にした時、その主人公は葛藤しないから、どうやってドラマを生み出すのか、難しい。だから本作も終始、水戸黄門OR浅見光彦的なカタルシスしかなくて、やっぱりそれはだんだん飽きてくるなぁ。

カメラは何か面白いことしようっていう工夫が感じられて嫌いじゃなかった。
キャスティングが絶妙。僕の大好きな日本のバイプレイヤー2トップの黒田大輔さんと野間口徹さんも出ててやっぱり素晴らしかったし、北村有起哉さん、柳楽優弥、小栗旬も良かった。
ただ、みんな響の言うことにすぐ納得しすぎでしょと思う。尺とエピソードの数的にそうせざるを得なかったのかもしれないけど、みんな素直すぎる。響の言ってることは正しいかもしれないけどやっぱり世間を知らない子供で、且つ天才だから言えることだよとも思うし。やっぱりどこか幼稚さもある。社会に出て生きてる大人たちや凡人たちには、もっと切実な、忸怩たる思い、ままならない思いっていうのはあるでしょ、そこは譲れないでしょ、正論を前にしてもそんなに簡単に折れられないでしょ、納得できないでしょ、と思うから。
アヤカ・ウィルソン可愛い。北川景子は今回に関しては適役でハマってたと思うけど、やっぱり演技下手……やっぱり見るに耐えない。耐えられない。耐えられなくなっちゃうんだよなぁ……。
大人の世の中の、思考停止してる慣習的な色々に対して、響がズバッと言うことは正しいなと思ったし取り上げるポイントの着眼点も面白かった。特に記者会見の質問の中身の無さとかくだらなさとか。