だんごむし

億男のだんごむしのネタバレレビュー・内容・結末

億男(2018年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

ただひたすら、九十九が一男を大好きっていう話だった。
2人の関係性や距離感が絶妙。九十九の愛の方が断然大きくて重くて、一男はそれに気づいていないところが、よき。

オチはちょっと、非現実的だったけど。お金じゃなくて、変わらない愛の話だったんだな。


やはり一生さんは、可愛くて愛すべき人だなと思った。一生さんは変わっていない。変わったのは、周りの人の見る目だ。彼はずっと、自分が好きで仕方ない芝居をただただやっているだけだ。
お金は変わらなくて、それを使う人が変化するのと同じように。


序盤で九十九が、一男の3億円を前にしてお金を語るシーンは良かった。目が絶妙で、九十九が何を考えているのかわからないところが。

九十九がただただ心配性な友人だっていうのを知ってから、例の3億円講座のシーンを見ると、かわいい。
九十九の目が結構真剣なんだよね。大金を手にして豹変した仲間を見て来たから、一男までお金で変わってしまわないかを真剣に危惧している感じ。

でもほんとは、一男の変わらない友情を試したいだけの盛大なかまってちゃん説もある。
さらには、愛が重い説もある。「3億円でどうするの?」に対して、「これで借金返してあいつら(妻と娘)と暮らせる」っていう一男の言葉を聞いた時の九十九の目がかなり暗くて、どきっとした。かなり、嫉妬や愛が重い設定なのかな。


あとは、モロッコのシーンは全般とても居心地が良かった。2人で落語聞くシーンや、一男を心配して35万円払っちゃうとこも。
一男が無事に起きて来たらひしっといきなり抱きしめちゃうところも。もう、身体から出てるんだよね、すき、よかった、っていう安心が。それに対して、佐藤健があまりにもあまりにもドライで、そのアンバランスが意図されたものなのかはわからないけど面白かった。

切ないのは、35万円払ったのは他でもなく、九十九が一男を大切に思ってるからなんだけど、35万円払ったことによって、一男は九十九がたくさんお金を持っていることを知り、自分とは違う世界の人だと感じ始めてしまうというのが、切なくて因果なものだなと。
この時から一男は、持ってるお金の量で、「自分と九十九は違う世界にいる」と思い込んでしまった。
それを解き放つには、九十九の逃走劇が必要だったのかも。やっと、対等にまた友達になれるようになった。

モロッコでの「ちゃんとしゃべれんじゃん、なんだよ」っていう一男のセリフはちょっと感じ悪かった。今まで、九十九が吃ることで自分より下だと思ってたのかな、って。それを聞いて九十九も少し悲しそうな顔。

2人が落研の入部の飲み会で出会うシーンもよかったな。


こういう九十九みたいな役、すきだなあ。1人で考えて思いつめて孤独を抱きしめて、不器用に大切な人を見つめ続けることで愛そうとする、そんな役、一生さんにハマってるなあ。

自分の実力や価値は変わらない。周りが変わるだけ、って結構何にでも当てはまるなあ。
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