だんごむし

善き人のためのソナタのだんごむしのネタバレレビュー・内容・結末

善き人のためのソナタ(2006年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

Das leben der anderen
物語冒頭では冷徹なDDRの歯車である主人公が、ある作家とその恋人の生活の一部始終を監視するうちに彼らに感情移入し、いつの間にか彼らを助けたくなってしまい、葛藤する。

冷徹で仕事人間な主人公が、作家の弾くピアノ曲に胸を打たれて涙を一筋零すシーンが印象的だった。
また、最初は同僚よりもデキる人間だった彼が、人間性を得る中で、いつの間にかStasiの落ちこぼれとなっていき、少し鈍かったはずの同僚の方が、主人公の妙な行動に気づき、出世街道を駆け上がっていく。二人の立場を逆転させて描いているのがうまかった。

また、話の中でずっと主人公が作家をこっそり監視し続けていたのが、最後には逆に作家が主人公をこっそりつけて正体を確認しようとしていて、この逆転も妙だった。互いにどちらも自分が相手のためにしたことを告げずに、こっそり助け、またこっそり本を出版する。
構成としてうまくできている。

また、最後のシーンでは主人公が本屋で作家の新作本を発見し、手に取る。ここからも彼がずっと作家のことを気にかけ続けていたことがわかる。そして「感謝と共に、HGWに捧ぐ」という前書きを見て、この本が自分に宛てられたものであることを知る。その本をレジに持っていき「贈り物ですか?」と聞かれて、「いいえ、自宅用です(Nein, das ist fuer mich=いいえ、この本は私のためのものです)」と答えるのがダブルミーニングになっていてとてもうまいなと思った。

そしてその作家が書いた本がこの映画自体になっているという入れ子構造。

後半3分の1までは、字幕なし、字幕ありで繰り返しながら見ていたが、最後は話に引き込まれてずっと字幕なしでみたけど理解できて嬉しかった。

恋人が結局裏切ったのは意外だったけれど・・・。
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