Kuuta

未来のミライのKuutaのレビュー・感想・評価

未来のミライ(2018年製作の映画)
3.1
あの家、ダックスは腰悪くするし、ハイハイする赤ちゃんは柵付けないと絶対危ないよなと思いながら見ていた。

細田監督はアニメを使った「演出家」としては日本最高レベルだが、「監督」「脚本家」としてはまだ拙い。こういう評価で間違い無いと思う。

山下達郎とか福山雅治とか、40代以上の親世代を狙った小品という印象。それなのに夏休み冒険活劇風に煽る予告宣伝とポスターが客の期待を損なう事態を招いていて、一番良くないのではないか。この時期にこの規模で売り込むタイプの映画では無い。

過去現在未来、日常と夢をシームレスに繋げる、映画、そしてアニメの特性を生かした作品。また、同じ構図の反復から人物の変化を描く細田流演出が、季節と世代を巡る家族の物語と相性が良いのは明らかで、様々な要素を詰め込み過ぎた前作の反動なのか、非常にミニマルに、シンプルに話を進めようという意図はよく分かる。

といった風に、勝算はかなりあったように思えたが…。正直この手のファミリー・ツリー的な家族ものは名作がたくさんあるだけに、今作のシンプルなトーンも相まって、細田脚本の物語の推進力不足が浮き彫りになった印象。淡々とした家族の話なので大事件が起きる必然はないが、伏線回収含め話運びはかなり薄味。毎回くんちゃんの成長がリセットされるため、90分通しての盛り上がりを欠いている。過去での行動がもう少し今と繋がっても良かったのでは(全てくんちゃんの妄想なのかも、という点は置いておいて)。話の流れ、勢いが足りないため、終盤の説明的なセリフが悪目立ちしている。

徹底して4歳目線で、かつオムニバス形式を取るのが挑戦なのは分かるが、物語上の効果は微妙。作画もすごいんだろうけど(冒頭の窓に息を吹きかける場面は強烈)いわゆる絵的な快感も少なく。

日常のリアルな描きこみと寓話的な展開のバランスが取れていないのはサマーウォーズからずっと変わらずで、結果つじつまが合わない場面も生じているが、その辺の「ツッコミ所」は今更良いのかなと。

ただ、一番大事な点として、平凡な日々が愛おしく見えないとテーマ的にこの映画は成り立たないと思うが…。両親が頼りないので、ちょっと冷たく、寄る辺のない家だと思ってしまった(自転車の練習に最後まで手を貸そうとしない父親)。それなのにあっさりと「家族の日常」に戻る展開に説得力を感じない。東京駅のあの展開を「くんちゃんの成長」と呼んでいいのだろうか?

誰にでも初めてがあり、一回コツを掴めば応用が利く。このひいじいちゃんのエピソードは良かった。すごく背が大きく見えるのは、現代の親との対比なんだろう。ラストのズボンも良かった。62点。
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