かささた

15時17分、パリ行きのかささたのレビュー・感想・評価

15時17分、パリ行き(2018年製作の映画)
3.0
不思議な映画です。何しろ実際に起こったテロ事件を当事者本人達が演じているのです。知っている俳優と言えばジュディー・グリアしかいませんでした。演じている本人達はどんな気持ちだったのでしょうか。つい何年か前の出来事を正確に再現しながら彼らは何を思っていたのでしょう。
この映画が何をしているかと言うと、「現実へ因果律を介入させている」試みだと僕は思います。現実とは本来様々な要因のぶつかり合いで、原因があって結果があるというような物語のような因果律は存在しません。けれどここでは彼ら3人の過去を写して、テロが起きたその時に彼ら3人が起こした行動の原因までさかのぼります。
物語のように人生をとらえようとする試みというか思想のようなものがここには見えるという気がします。

しかし……例えば僕が数年前に起こした何かのエピソードを映画化しようという人が現れて、しかもその役を自分が演じるとしたらどうでしょうね。演じながら何やってんだ俺はと思うでしょうね。真面目に作っているクリント・イーストウッドには申し訳ないのですが、この映画には全体的に悪ふざけのムードが漂っています。だってそうでしょう。僕の人生が映画になって自分が演じるんですよ。その事自体が大事件です。それをもう一回映画化したいくらいです。「自分の人生を自分が演じて映画化」してるのを映画化したいくらいです。(ビョークのPVでそんなのがありましたね)人生を物語にしていることを物語にしていることを物語にしていることを以下永遠につづきます。
またこんなことも思いました。この映画では主役の3人以外にも可能な限り本当に事件にあった当事者を役者として起用したらしいのですが、なら犯人の人も本人が演じたらどうなったのでしょうか。
演じるという行為や事実を物語化するという行為にはどこか空恐ろしい悪ふざけめいたものを感じてしまいます。
でもそれはそれとして映画は面白かったです。
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