MasaichiYaguchi

人魚の眠る家のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

人魚の眠る家(2018年製作の映画)
4.1
ハンス・クリスチャン・アンデルセンの童話「人魚姫」では、ヒロインが美しい人間の王子に恋して犠牲やリスクを払って恋い焦がれるが、東野圭吾さんの同名小説を篠原涼子さん主演で堤幸彦監督が映画化した本作では、不幸な事故により脳死状態になってしまった愛娘を巡り、周囲を巻き込んで母親が奔走していく様がエモーショナルに、ドラマチックに繰り広げられていく。
この作品を観ると、改めて人の死には2種類あることが分かる。
1つは心臓や呼吸が止まる「心臓死」、もう1つは本作のモチーフになっている脳が全く働かなくなった「脳死」。
医療技術が進歩、発展するなかで命をより延ばすことが可能となった現代、生と死のはざまでの選択が益々難しくなっていると思う。
ましてや家族ならば例えまやかしだとしても、恰も深く眠っているようにしか見えない掛け替えない存在に対して究極の選択など簡単に出来よう筈もない。
本作は、この難しいテーマにエンターテイメントの要素を織り交ぜながら、心揺さぶる感動的な家族の物語として我々に提示する。
原作童話は悲恋で終わるのではなく、最後に魂の救済がされるが、この作品では悲しみや切なさの先に温かな光や温もりを残してくれる。