すずや

トム・オブ・フィンランドのすずやのレビュー・感想・評価

トム・オブ・フィンランド(2017年製作の映画)
4.0
この映画の公開にあたり、性描写の過激さから1度は公開も危ぶまれた、という話を聞きすごく楽しみにしていた。ただ、その性描写だけが全てではないし、1人の芸術家の映画として評価されるべきだろう。(あまり性描写の過激さは感じなかった、というのが本音)

戦争での経験、自分の欲望への目覚め、明確には描写されることのないかつての恋人の存在、それらの記憶から逃れようともがき、逃れられないと悟る。そんな物語であった。舞台としては1940〜80年代くらいかな?
私がこの映画でとても良いと思ったのが、トウコは明確なヒロイズムを有していない、とはっきり描いていること。あのような絵を描き続ける動機には「ゲイの人々のために」というような理由がある、と思われがちだが、トウコはそうではない。「自分は自由の戦士じゃない」というセリフに代表されるように、自分が悪夢から逃れるために、自分の目を楽しませるように、こっそりと書いていたに過ぎない。それがあるきっかけで世界へと広まって、初めて「自分には世界を変える力があったんだ」と気づく。その描写が上手いと思ったし、私は好きだった。

ちょっと時間軸の飛び方にはしんどいところがあるよね……
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