Kuuta

赤い天使のKuutaのレビュー・感想・評価

赤い天使(1966年製作の映画)
3.8
今まで見てきた四肢切断シーンの中でも上位のエグさ。直接は見せないが、ゴリゴリ…と骨の硬さが分かる(部位によって音が変わる嫌すぎるこだわり)。バケツいっぱいに切断された手脚や血の描写は、モノクロを選んだからこそ嘘くさくなく成立している。

・戦場の男はその日起きた全てを忘れようとするが、西(若尾文子)と性的な関係を持つことで正気を渇望し、明日への絶望に沈む。血の通った人間として男を死なせていく姿(桜の認識票を植え付ける)は、まさに赤い天使。

・極限状態での性愛を肯定しつつ、傷病兵を通して戦争の悲惨さを描く。蠱惑的な色気に溺れる終盤はリアリティラインが分からなくなり、ブラックな寓話の香りすらした。

・細身の若尾文子がピシッと看護服を着こなし、「はいっ」と返事して働く様子に魅了された。看護婦の西から女としての桜に変わる制服の着脱、終盤のぶかぶか軍服コスプレのギャップに萌える…だけでなく、「男女の関係の逆転」という増村の主題がはっきり現れる。

・パニックになった後輩がふらふら〜っと戦場に出ていくとこ怖過ぎ。遠くの方で敵が動いているのが見える構図も良かった

・男に囲まれる圧迫感。複数人を画角に入れる増村の絵作りと物語が連動している。

・慰安婦や慰安所がはっきり描かれる映画、不勉強ながら初めて見た。日本映画がどう描写してきたのかもっと見たいと思った。
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