駆け込み若尾文子マラソン② やっぱり群衆を描かせたらピカイチの増村 野戦病院の仕事ぶり、負傷兵を山盛り乗せたトラックが到着したらまず死体(あるいは準「死体」)とそれ以外とに分類し、それ以外の方は片っ端から局部麻酔でギコギコ腕や脚を切り下ろされていく 身体から離れた瞬間のがくっという動きや落とされた腕や脚がペン立てみたいに放り込まれるドラム缶のディテール、しっかりずっとリアルな悪夢ですごい
たとえば戦争の悲惨さを伝えるための逸話として戦地に送り出された若者がウソの骨壷として帰ってくるというエピソードを拾ってもそれは間接的な語りでしかなく、直接的な・実際の死や死に損ねても無慈悲に続く生の苦しみを透明化している、わたしたちはいつも悲劇を遠巻きに・冷静にしか受容できない
翻って若尾文子にピントを合わすと、若尾文子って地声が低いのがたまんないよな♡とかねてより思ってるので一人称が「西」で常に張り詰めた声色の彼女はずっとたまんなかった 軍医を好きになっちゃう理由が生まれた前に死んだ父に似てるからなのも女でいいね 終盤、今夜の襲撃で全滅なるかもな〜の中で奇跡のセッを成功させたり軍服プレイ始まったりなのはおやおやおや と集中途切れたけど、理想ばかり口にする若い看護婦 というある種フィクショナルな設定の彼女にきちんと体重分の重みを終始感じられるのはやっぱりブラボーだった
あとこれは日中戦争についての物語だったけどはっきりと慰安婦の存在を描いてて拳を強く握った 戦後を生きるおじさんたちの荒唐無稽な傷つき(仮)のために歴史を都合よく捻じ曲げる(あるいは覆い隠す)なんて本当によくない 億が一そうした事実がなかったとしても(何事もなかったことの証明なんて原理上できないはずなのだけど) よかった病気の子供はいなかったんだでいいだろが