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赤い天使のRenkonのレビュー・感想・評価

赤い天使(1966年製作の映画)
5.0
強烈。ただその一言。
ここまで戦場の惨さと人間の"性(さが)"を描ききった作品を、僕は知らない。
戦時中の中国天津に従軍することになった西看護婦(若尾文子)。
前線の診療所へと配属された彼女(以降さくら)は、兵隊たちが次々と手足を切断されていくという、衝撃的な光景を目の当たりにする。

タイトルの「赤い天使」というのは、看護婦の白衣が兵隊たちの血飛沫によって、真っ赤に染まってしまう様を表している。
十分な医療設備が無いからと、バッサバッサと手足を切断していく岡部軍医。
兵隊たちの阿鼻叫喚が聞こえる中行われる施術シーンからは、圧倒的な血生臭さが漂っていた。(バケツに溢れんばかりの手足が映るシーンはしばらく脳裏に残りそう…)

さくらとの出会いによって"男として蘇った"折原と岡部のエピソードが挿入されることにより、戦争の悲惨さだけでなく、"オーガズムによるカタルシス"という男としての"救い"を描いている。
特に両腕の無い折原一等兵との一幕は「セッションズ」や「暗闇から手をのばせ」よりもずーっと前に(しかもそれらよりも真を突いた)「障がい者の性」を描いており、感慨深いものがあった。

コレラが蔓延し、外には敵部隊が迫る中での、岡部とさくらの"軍服コスプレシーン"がこれまた強烈だった。
それまで厳格だった岡部軍医が「ぶどう酒を取りたまえ!」と命令されて、いそいそ従っちゃうとこなんか、なんとも微笑ましい。

岡部の胸に残されたさくらのキスマーク。
それは、男として誉れな人生を歩んだ証しとして、その胸に刻まれるのであった。
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