くわまんG

ボーダーライン:ソルジャーズ・デイのくわまんGのレビュー・感想・評価

4.0
国境!組織!善悪!私怨!数多の境界線を僅かな躊躇で越えまくる、暗殺者の生きざまから目を背けるな!みどころだらけのノワールバイオレンスエンタメ!

みどころ:
ベニトロのアイコンキャラ誕生
容赦ない暴力にしびれる活劇
思惑が絡み合う精巧な脚本
前作の鑑賞が必要ない
ベニトロが強すぎて笑う
I.モナーの演技が大人顔負け
シリアスだが重厚さは失われた

あらすじ:
CIAの汚れ仕事専門家マットに、新たな任務が舞い込んだ。標的はメキシコの麻薬王、レイエス。その最愛の娘を別カルテルの仕業に見せかけて誘拐し、カルテル同士に抗争を起こさせ、弱体化したところを一網打尽にするという、超重大な作戦。
マットは早速、盟友アレハンドロを招致。最強工作員というだけでなく、レイエスに娘を殺された経緯のある、孤高の復讐者でもある。
その精鋭部隊は難なく誘拐を成功させ、後はことが荒立つのを待つのみとなった。だが達成を目前に、僅かな興奮が冷静さを損なわせたのか、彼らは最も大切なことを忘れていた。メキシコに、安全など無いということを……。

古くはポール・カージー(さげまん)から、ジェイソン・ボーン(ブス専)やフランク・マーティン(ハゲ)、ジャック・リーチャー(劣化)にブライアン・ミルズ(過保護)にロバート・マッコール(ロリコン)、そしてジョン・ウィック(犬好き)。闇を抱えたオッサン殺し屋というのは魅力的なもので、中でもシリーズ化されたキャラは、こうして並べてみると各々抜きんでたところがありますねぇ!この錚々たる面子の中に、このほど強烈な新顔が名を連ねました。

傭兵アレハンドロ・ギリック。カルテルに家族を惨殺された元検察官。難渋しそうなミッション時にだけリクルートされる奥の手。最高クラスのサバイバルスキルは言わずもがな、特筆すべきはその胆力で、常に情を捨てることができる。ジョン・ウィックが白の暗殺者なら、アレハンドロは黒の暗殺者。演じるのはベニチオ・デル・トロ、誰よりも“死んだ目”のオッサン。アレハンドロ(死んだ目)なのであります。

前作に続き、序盤は同情できないほど冷徹なキリングスキルを見せつけるアレハンドロ。しかし、今回は図らずも弱点が露呈します。彼が情を失った殺人マシンではなく、努めて情を捨て続けている人物だということが明らかになるのです。それも、娘を殺した男の娘と関わることによって…。

繊細な人物描写が際立った前作とは打って変わって、大味で力強い型にハマったシリーズ2作目でした。ただ、他の殺し屋映画と違って、アレハンドロが絶対的主人公ではなく、主人公の一人というスタンスを前作から崩さなかったのは吉だと感じました。

なけなしの正義を貫いたヨゴレ軍人、血塗られた運命を直視した極道の娘、また自分だけが生き残ってしまった傭兵、そして天賦の“才能”を備えた少年…。勘違いにより煮詰まった各々の想いが衝突して、大惨事を生むに違いない次回作。ぜひ、引き続きこの監督脚本でやってほしいですねぇ!