しゅんまつもと

万引き家族のしゅんまつもとのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
4.6
先行上映にて。
思ってたよりもずっとずっとドライ。感動や涙を煽るような演出やシーンもほぼほぼ0。質感は「誰も知らない」が一番近い気がした。

後半のある展開を迎えるまで、明らかに家族を俯瞰するショットが多用される。彼らから見る世界はほとんど映らない。(唯一あるとしたら海のシーンの樹木希林視点。あそこが転換点な気がする)
「海街diary」のあの忘れがたい花火のシーンを超える花火のシーンがまさか訪れるとは。

話を戻すと、題にもある通り「万引き」をする彼らを僕らは「見つめる」ことしかできない。彼らが見つめる世界は見ることができない。
でも見つめていく過程で、時々覗かせる闇はあれども彼らを「家族」であると認めざるを得ないというか、問題はあるかもしれないけれど心の大半はこの家族が幸せであってほしいと祈ってしまっている。
その臨界点を迎えるのが先に述べた海のシーンなのだけど、そこから折り返した終盤30分程。
ある人物たち(奇しくもきみはいい子コンビ)の視線が彼らを裁こうとする。そう。いわゆる世間一般のものさしで。
これまで彼らの幸せを願いながらみてきた自分は、世間一般の意見に怒りを覚える。つい数時間前までそっち側にいたはずなのに。普通の家族って、普通の母親って、普通の生き方って。
このシーンの安藤サクラの目、手の動き、声、すべてが言語を超えた何かというか。「なんだろ。なんだろう。何なんでしょうね。」

この映画は何も断罪しない。
ただ、最後に振り返りながらもバスに乗ったのは彼が自分で選びとった道なのだ。それを正しいことと言わずに何を正しいと言うのだろう。
ラストカット、彼女の見つめる先の世界にいる僕らは何ができるか。それは映画館を出てから考えること。
スコアはちょっと落ち着いてから。