エドワード農村

万引き家族のエドワード農村のレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
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日本国民全員が社会問題として意識すべき。なんてこと言うものでもない。むしろこういった感情と関係のない人たちはあえて知り得なくていい事実だと思う。例えばこれをみて暗い気持ちで泣いてしまう人。あなたはあなたの人生をそのままGOだ。知り得なくていい。泣いている場合ではない。

別に彼らは万引きだけで暮らしているわけではなく、各々に職をもっていてもその日暮らしになっている。自分の世話も儘ならないのに、他人が困っていると見過ごせず手を差しのべてしまう。それが地獄だということが本質だと思う。

どうしてそうなるのかの構造をよく理解できるようになることが大事だし、子供を持てなかった安藤サクラが最後に独白するように、家族ごっこの共同体幻想のなかで、誰かを救うことで存在意義を得る「共依存」を自覚できるようになることこそが大きな気付きだと思う。

未熟者同士が肩を寄せあって暮らすことで求心し依存に気づけなくなる地獄。大人として導く第三者の不在。是枝作品にしては家族の描写が明るくほんわかしている方とか思うのは、この構造を炙り出すためだと思って怖くなった。そしてラストカット。泣いている場合ではないよ。是枝さんエグい。