エドワード農村

カモン カモンのエドワード農村のレビュー・感想・評価

カモン カモン(2021年製作の映画)
4.4
おとながこどもと時間をともにする時、なるべくは、おとながこどもの世界線にあわせることが今尚推奨される気がしている。

今までは大人の世界の問題は隠し通せた家庭も多かったかもしれないけれど、こどもは賢い。この検索ヒットで世界を知った気にもなれる世で、働きながらこどもと時間をともにするなら、こどもに大人があわせることは思考停止なように思えていた。こどもに付き合って感情を善にしたり、大人の世界で起きている問題を隠し、それに伴う感情を教えないことこそが、こどもをなめている態度だし、自分が幼かった時まさにそのことに憤っていた。

子供をみるなかでの訳のわからなさを、大人のあなたが、特に合わせずに大人のまま引き受けるならどうするという視座には、多くは蓋をされ議論されてこなかった気がする。子どもに対峙することは、センチメンタルじゃないし、果たされなかった自身の子供時代の焼き直しでもなくて、交流の根源にたちかえる時間だと感じる。

意味の成さない話を永遠にされ、なめられ、騙され、辱められ、そこに社会で持ちかけられる尊厳のかけらはない。大人は戸惑い、反省し、誤りを認め、混乱し、怒り、ひどく疲弊しながらも、あなたを受け入れることを体現する。それがこどもとともに生きる世界だ。(本編に近しい母の役割についての引用があったけど、このことに社会が高い価値を置いていない、一部に役割を押し付けて、本質を無視していることには怒りが消えない)

おとながこどもの世界線を生き、こどももおとなの世界線をいきる、荒い呼吸をあわせているうちに重なって、混ざり合って、お互いしらなかった自分に出会い、自分と他人を行ったり来たりして世界を知る。感情のバリエーションをやってみせて、ほらなんだっていい、戸惑って叫んで当然とするのは、9歳には本当に大切なことだと2人の子育てをするバカでぺらっぺらな当事者として思う。