あらゆるシーンで表現される日本の抱える社会問題への提起がいい映画。
今の日本には見えているはずなのに見て見ぬふりをしている、あるいは口だけでは解決していると言いながら全く進捗していない問題が沢山ある。
そんな現実をこの映画は観るものにつきつけていたのではないだろうか。
高層ビルの間にポツリと取り残された古い家屋が彼らの家であり、彼らを象徴していたように思える。
連れてきたりんちゃんが〝家族〟を一つにしたが、そのりんちゃんがこの〝家族〟の本質を明らかにしてゆく構図が面白い。
りんちゃんにとっての本当の家族はどちらなのだろう。
最後のシーンの悲しげに隙間から除くりんちゃんが忘れられない。
彼らはスイミーたちのようにならないと生きていけない。
後半から徐々に明かされる家族の秘密が切ない。
あの家に住んでいる時は間違いなく家族だったのに。
たまにこの映画を家族愛を描いたものという人がいたが本当にそうだろうか。
映画を観たあと、評価を見ながらわたしは疑問に思った。
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どの女優、俳優も素晴らしい役者さんたちだが、中でも安藤サクラの演技が輝いていた。
安藤サクラの映画はこれからもっと観ていきたいと思う。
あの無言で訴えるシーンがあれほどまで突き刺さるとは。
警察の立場から見れば、あの〝家族〟は極悪な犯罪集団でしかないが、あの〝家族〟の本当の姿を観てきた観客からすれば警察が悪者に見えてしまう。
同様に、りんちゃんが家族のもとにもどされたときの会見や、報道陣の質問の内容には悪意を感じる。
もしこのニュースを物語の裏面を知らないで現実でみたら、私だって良かったねとしか言わないだろう。
ここが是枝監督の賞をとったポイントにもなるのだろう。
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ただ、松岡茉優の背景がわからなかったところが残念だった。
なんで血の繋がらないおばあちゃんがいて、犯罪が蔓延っているこの家を好き好んでいるのか。
普通の家庭で育つのでも良かったのではないか。
わたしの観方が浅かったからなのかもしれないが疑問が残った。
前評判とか、評価、パルム・ドールをとったということを全く気にしないで観てほしい映画だった。