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万引き家族のTKSDのネタバレレビュー・内容・結末

万引き家族(2018年製作の映画)
2.8

このレビューはネタバレを含みます

「産みの親より育ての親、という場合もある。」
と、伝えたかったのでしょうか。
自分には、これ以上のメッセージを汲み取ることはできませんでした。

全体的に説明が少なかったり一瞬だったりで、えらく頭が疲れました。

まず、主人公一家が日々万引きして生活しなければならない理由がよく分かりません。
彼らはそこまで貧しかっただろうか?
仮にそこまで貧しいのであれば、死体を隠して年金を騙し取るぐらいの知恵と行動力があるのだから、何らかの公的支援を受けるぐらいのことはできたのではないでしょうか。

結果、主人公達が日々モノを万引きするシーンは、ヒトの万引き、共同体の万引きをも厭わないことを暗に示しているのかな、程度にしか感じられませんでした。

人さらいについて。
子どもにとっては、虐待する実の親より、虐待しない他人といる方が幸せかもしれません。とはいえ、個人が勝手な判断で決めたらマズイことになる。主人公達もその点の想像はしていたと思います。

そこを乗り越えて、個人の勝手な判断で人の子どもを誘拐し、かくまい続けるだけの行動原理を分かりやすく見せて欲しかった。

身代金の要求などをしなければ誘拐にはならないと安藤サクラは言っています。
しかし、子どもを元の家庭から勝手に引き離せば警察ザタになることは明らかで、彼らもそれぐらいは分かっていたように思います。
一方で、元の家庭に戻せばその子どもが悲惨な目にあうことも分かっていました。

であれば、はっきり分からなくとも、どこかお役所的な所に相談するべきであろうことも想像できたはず。

それを振り切ってでもかくまうほどのポリシーが見えなかったので、導入からシラけてしまいました。

一応の動機として、主人公の男女が家族を欲しがっていたであろうこと、安藤サクラも虐待されて育ってきており、産みの親に対する猜疑心が強いのであろうことはなんとなく描かれています。

もっとも、安藤サクラの傷跡が親につけられたものなのか、元夫につけられたものかはよく分からず、実の親への猜疑心うんぬんは自分の想像でしかありません。
ここをはっきり描かないことに何の意味があるのでしょうか。

結局、主人公達が「虐待する産みの親より、自分たちのコミュニティにいた方が幸せに違いない、その方が自分達も心地よい」という自分勝手な思いに任せて行動しているようにしか見えませんでした。

最終的に主人公達はお縄になりますが、ここで一般的な良識をブチ破るほどの思いを知りたかった。しかし、それを知ることはできませんでした。まずもって、一般的な良識派の主張が弱いのです。

安藤サクラは良識派代表らしき警察に「子供には母親が必要だ」という説教をされますが、警察側は明らかに「産みの母親」に限定しています。

これに安藤サクラが「(産みの)母親がそう思いたいだけだ」と反論していますが、警察の言い分が薄っぺらすぎて、全く胸に響きません。

産みの親が子にとってベストでないことは当然にありうることであって、2時間もかけて伝えることとは思えません。

こちらの理解力の問題を差し引いても、役者の高い演技力に任せて、ダラダラと描いているようにしか見えませんでした。

自分が見たかった部分と作り手が見せたかったであろう部分が豪快にズレてしまったようです。残念。
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