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北朝鮮をロックした日 ライバッハ・デイのmhのレビュー・感想・評価

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祖国解放70周年記念行事に招かれたユーゴスラビア発祥のロックバンド――ライバッハの北朝鮮公演のドキュメンタリー。
何年もかけた打ち合わせにまったく意味がなかったことを知る冒頭から飛ばしている。
しょぼい設備に、電源を抜くのが好きな会場職員。
監視員の帯同+検閲官の臨席でしっちゃかめっちゃかになっていくいつもの北朝鮮ものと思わせておいて、それを食い止めようとリーダーシップを発揮するバンマスがかっちょいい。

・誰だこいつは! 突然出てきていうこと聞けるか!
・やめろというのは作ったひとに失礼だ。だめなら具体的に示してほしい。
・ダメだしするなら顔を出せ。挨拶してからが筋だろう。

これらは、北朝鮮ものすべてに通じている。
社会人としては当たり前のこといっているのが、問題行動で有名なカルトバンドという構図が余計面白い。
検閲官のいいぶん「(映像も音楽もとなると)わたしたちには情報量が多すぎます」「なにが起こっているのわからないと思います」が、あながちウソでもなさそうなところが北朝鮮クオリティ。これはのちに公演中の客席の様子というかたちで伏線回収される。
そう、こねくり回した挙げ句、観客(おそらく政府高官の家族)のだれにも響かなかったという現実がこのドキュメンタリーのクライマックスになっている。
壮大なポリティカルコメディという意味でも、これは金字塔なんじゃないかな。つまり、この映画自体が、北朝鮮という国を端的に物語っているのだった。
面白かった。
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